hasse

不安は魂を食いつくす/不安と魂のhasseのレビュー・感想・評価

4.0
演出4
演技4
脚本4
撮影5
音楽4
技術4
インスピレーション3
好み4

○「幸福が楽しいとは限らない」(冒頭より)
 「アリ、私たち大金持ちよ。天国の一片でも買おうかしら」(エミ)

これまでに見た『ベロニカ・フォス…』『第三世代』『13回目の…』とは全く異なるタイプの作風ーーファスビンダーの持ち味と思っていたラディカルな言葉、イメージ、音の表象が鳴りを潜めたメロドラマーーにいささか面食らいつつ、独特の余韻を残して終わった。

この頃(1971~79年頃)の監督はダグラス・サーク監督のメロドラマにハマっていたらしい。ここぞというシーンは、安っぽく甘いメロディがかかったりと、かなり本気度が伝わってくる。

とはいえ、初老のドイツ人おばちゃんと若いアラブ人のロマンスという設定はなかなかエッジがきいている。

孤独と現状のやるせなさを埋め合える存在として二人は互いに引かれ合う。二人の存在は強く結びあい、一個となるが、黒人差別から周囲より敬遠されてしまう。二人は幸福なのに、二人はより一層世界から隔絶され、孤独な存在となる。
嫌気が差した二人は湖畔への旅行を決行する。帰ってくると二人はなぜか周囲に受け入れられる。エミの掃除婦仲間、子供たち、近所の食料品店の親爺。ここは何の説明も、きっかけとなるエピソードもない。もちろん、黒人へのナチュラル蔑視は依然残っているが、とにもかくにも二人の生活は軌道に乗る。
だが、アリは故郷の味クスクスや若い女の肌が恋しくなり、行きつけだったバーの女主人と肉体関係を持つ。
エミの再度の帰ってきてほしいという哀願に、アリも心を改めるが、ストレス性の胃潰瘍で倒れてしまう。
幸福とは何かを考えさせられる作品であるーーなんて凡庸な感想で、ファスビンダー作品を見終わってしまっていいのか?と不安になる……。また何か思い付いたら書こう。
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