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不安は魂を食いつくす/不安と魂のchiのレビュー・感想・評価

3.8
先月「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」を見たファスビンダー監督の特集上映があるということで、タイトルに惹かれたこちらを鑑賞。

幸福が楽しいとは限らない。
初老の掃除婦と若い外国人労働者の恋。恋に落ちた当初の、お互いに全く違うからこそ楽しくて話が止まらない感じから、周囲の偏見と差別に晒されていく感じの描写が流石だった。2人だけでいられれば楽しくて幸せなのに、世界には2人だけではないから周囲の目を気にせずにはいられない。年齢も背景も全く異なる話だが、先月見た「CLOSE」と重なる部分があるなぁと思った。人間は周りの人の目を気にせずにはいられないし、耐えられないんだなと。
そしてこの映画は約50年前の作品だが、差別描写がすごい。今はこの時とは違うのかもしれないけど、今は違うよとは簡単に言えない情けなさも感じる。監督は意図的にこれほど露骨な差別描写を入れていると思うが、そう考えると結構社会派な作品とも言えるかもしれない。
それと相変わらず構図が見事。ポスターになっているシーンも、カフェの黄色い椅子がたくさんのシーンも、螺旋階段のアパートもどれも良い。
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