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不安は魂を食いつくす/不安と魂のbennoのレビュー・感想・評価

4.4
ファスビンダー監督作品…10作品目…。

ダグラス・サーク監督の『天はすべてを許し給う』へのオマージュとして知られていますが…実際には似て非なるもの…。

ファスビンダー流のクールなタッチのメロドラマはサークの美しい世界とは性質もトーンも何もかもが異質…違和感だらけのシチュエーションから始まり、ドラマの激しさ、テーマの重さ…そして圧倒的なキャラの濃さ…特異で強烈な映像作品です…。


ある晩、雨宿りのためにバーにひとり立ち寄る60代のドイツ人女性エミ…。

バーに入るなり、そこに居た客たちからの凍りつくような好奇の目…特にバーのママが怖っს …そこはモロッコ移民たちが集う溜まり場でした…。

エミはそこで随分歳下のモロッコ人アリと出逢い…ふたりはダンスをしたり、会話をしたり…思わぬ楽しいひと時を過ごします…。

すっかり意気投合したふたりは…いきなり同棲…そしてやがて結婚へ…。

しかしふたりの行く先々には越えなければならないいくつもの障壁が…。

掃除婦として働く独り暮らしの年老いた女性とかなり歳下のアラブ系外国人労働者…。

異色のカップルにエミの家族は猛反対…そして世間の目もとても冷ややかです…。 

ファスビンダー監督自身もエミの娘婿として出演…非常に態度の悪い嫌な役を熱演…そしてエミたちの疎外感が強まるにつれ、窓枠やドアの隙間を使った映像も冴えてます…撮影監督はヴェンダースやハネケの作品も手掛けるユルゲン・ユルゲス…。

移民問題、人種差別問題…そして歳の差婚…周囲の人たちからのあらぬ差別や偏見…そしてそれは心の偏狭さや虚しさを露呈します…。

果たしてふたりは……??


  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜








ふたりは差別によって追い詰められます、が…意外な展開により物語は急変!!

しかしその後、我々は衝撃を受け、気付かされるのことに…。

エミのピュアな愛は失われ、傲慢な愛に変わっていたのです…。


差別される側も無意識のうちに差別的に…抗えぬ連鎖…恐怖です…。
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