りょうすけ

不安は魂を食いつくす/不安と魂のりょうすけのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「不安は魂を食いつくす」

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品。清掃の仕事をする老女とモロッコからドイツに出稼ぎに来ている労働者の愛を描いた物語。

素晴らしい作品だった。物語はバーで2人が偶然出会うところから始まり、そのまま一夜を共に過ごす。そして結婚し、数々の苦難を乗り越えたかと思いきや、2人の間にはいつも間にか距離が生まれ…という様にスピーディに事が進んでいく。

町中の人が外国人労働者と関係を持つ女性に対して「ふしだら」や「淫売」などのイメージを持つ中で愛し合った2人。同じアパートの人や行きつけの店にも距離を置かれ、子供たちからは絶縁を言い渡される。

物語前半はそんな悲しい出来事が立て続けに起こるものだからもう観ていられない。誰かこの2人に救いの手を差し伸べてくれという気持ちになる。そして老女が出した案が「旅行」で、この旅行から帰った途端に周囲の人に変化が現れる。

だが、夫は妻との関係性に不満を抱き、バーの女亭主と浮気をする。最終的に夫は妻だけを愛することを誓ったが、病気が発覚し、悲しい雰囲気の中物語は終了する。

90分しかないにも関わらず、一度たりとも「何事も上手くいく」などという出来事が起きない映画で、常に悲しみや憎悪に溢れている。老女と外国人、この組み合わせがいけないのか。何か悪いことをしたのかと聞きたくなるほど、彼女らは報われない。

こちらも陰鬱な気持ちになってしまうが、この物語により深みを持たせる撮影の方法が非常に印象的だった。ポスターにもなっているヒトラーが訪れたと言われているレストランのシーンや結婚の報告を子供達にするシーン、夫の浮気のシーンなど、どこをとっても撮影が光っている。内容とは裏腹に惚れ惚れするカットが多かった。

最終的に良品に浸らせて終わるところも好きだった。このあと、2人がどの様な運命を辿るのかは誰も知らない。こんな映画が俺はとことん好きなんだなと思わせられる様な作品だった。
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