Balthazar

シェーンのBalthazarのレビュー・感想・評価

シェーン(1953年製作の映画)
3.6
はい、皆さんご唱和ください。

せ〜の

「シェーン!……Tバック!!!」byタモリのボキャブラ天国

 
子供のミクロな視点と大人の現実の世界は違う。少年は世界を善悪二元論で見ている。
少年の目には、自分たち開拓者を追い出そうとする古参のカウボーイたちの姿が悪党として映る。そこに颯爽の現れた流れのガンマンの姿は正義のヒーローとして映る。

しかし、世の中はそう単純じゃあない。
 古参のカウボーイたちは、この地に最初にやってきて生活基盤を築いた先駆者。彼らは自分たちの脅かされざる権利を主張し、言っても聞かない侵入者を力で追い払おうとする。

一方で新参の開拓者たちは、現行の法の上での権利を主張し、法を盾にして暴力には断固として屈しないと言い張る。どちらにも一応の正義がある。

狩猟民と農耕民は往々にして土地を巡って争いになるものだ。

シェーンも、流浪のガンマンなんて響きはかっこいいが、ようは日陰者の人生を送ってきたはず。決して正義の味方ではない。本来ならカウボーイ側の用心棒になっていてもおかしくはなかったはず。彼は最後のサムライみたいなもので、自分たちが過去に生きる人間、やがて去り行く存在だと理解していたからそうしなかった。

結局は古参のカウボーイたちは死に絶え、すべてを終わらせたシェーンも一人去っていく。そして平和は訪れた。新たな光が差し込んで、それまでの影は消える。少年は「戻って」と懇願するが、悲しいかな、そこに硬派な男の居場所はない。銃と無法が支配する時代は終わったのだから。
これは西部開拓という、ひとつの時代の終焉、滅びゆく古い人間の象徴ということなのだろう。
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