櫻イミト

死体を売る男の櫻イミトのレビュー・感想・評価

死体を売る男(1945年製作の映画)
3.5
黒沢清監督絶賛の1940年代医療系ホラー。「サウンドオブミュージック」(1964)のロバート・ワイズ監督が「キャット・ピープルの呪い」(1944)の次に手掛けたデビュー2作目。フランケンシュタイン役で有名なボリス・カーロフとドラキュラ役で有名なベラ・ルゴシが最後の共演。

1831年スコットランド。エディンバラの医者マクファーレン(ヘンリー・ダニエル)は医学生の教育にあたっていた。教育には解剖用の死体が必要だが当時は死体の売買は非合法。そこで辻馬車の御者グレイ(ボリス・カーロフ)から闇で死体を買っていた。そしてある晩、街角でいつも歌っている少女が姿を消した。。。

耽美なムードが漂う気品あるホラーだった。シナリオ、映像、共に無駄なく綺麗にまとまっていてサスペンスとして楽しめた。殺害や死体を映すことは無いので、ホラー目当ての人には物足りないかもしれない。

助演のアンダー・テイカー(墓堀人)役のカーロフ、チョイ役のルゴシ、どちらも特殊メイクをしていないので知らないで観たら気付かなかった。その分、二人の芝居の底力が垣間見えたと思う。

気の優しい医学生、歩けない少女、街角の歌う娘など、脇役の登場人物たちの配置も上手く、ワイズ監督の構成演出力が当初から発揮されている事に感心する。

※本作は“RKOのリュートン・ホラー”と呼ばれる作品群の一作。ユニバーサル・モンスター・ホラーに対抗し、名プロデューサーのヴァル・リュートンが力のある若手を抜擢して制作した。戦争の影響で日本では公開されなかった。

※チョイ役の猫の演出が史上屈指の完成度
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