シンデレラスタイルの物語を、大胆にアレンジしつつも大人のラブコメに仕立てるワイルダーの卓越した脚本の素晴らしさが堪能できる佳作。そして肝心の王子を舞台がモンテカルロだからといって上流階級にせず、あえてタクシー運転手にしているのもミソ。
主人公のヒロインを男爵夫人に仕立てて自分の愛人のふりをさせて妻の気を引こうとするも、なぜかタクシー運転手とヒロインを結ぶキューピットになるジョン・バリモアのおじさん演技も楽しい。でも『特急二十世紀』といい本作といい後半生のバリモアはみじめな中年男性役が多いが、若い頃はスターだった彼にとってあまりいい気分ではなかったのではと思うと少し複雑な気分に。
バリモアと妻とヒロインのコルベールによるスリリングなカードゲームのやりとりがヨーロッパチックで印象に残る。
ところで手塚治虫は晩年『ミッドナイト』というタクシー運転手を主人公にした漫画を手掛けているが、手塚治虫が映画好きであることを考慮するとやはりこの作品が元ネタなのだろうか。