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恐怖の獣人のhorahukiのレビュー・感想・評価

恐怖の獣人(1958年製作の映画)
3.5
時が掟を変えるのだ!

29日にDVDが発売されるので、昔にせっかくBOX買ったやつを今のうちに。某有名監督の有名作の元ネタとか言われたりもしてるロジャーコーマン先生のSFホラー。有名作の方はかなり前に見たからすっかり忘れてて比較できなかったけど…

時代がいつかはわからないけど、狩をして暮らす原始人たちの集落が舞台。触れただけで命を奪う神がいるとされている川の向こうの禁断の地。その場所に決しては行ってはならないという部族の掟に疑問を持つ10代の主人公が掟を破ってでも禁断の地へと旅立とうとする。

主人公たちが暮らしてる地はなかなか厳しい状態のようで、緑豊かな川の向こうに行けば生活もマシになるはずなのに、掟に盲目的に従おうとする長たち。若い主人公が反発感を覚えるのも当然なんだけど、掟を破れば災厄が訪れると信じる老害たちがすんなり許してくれるわけもなく、この部族内部のイザコザがメイン。

コーマン先生なので、ジャケ画像になってるような迫力あるシーンなんてものは全くなく、獣人さんも何の迫力もないゴワゴワした着ぐるみ感で、ビジュアルは『原子怪獣と裸女』の怪物さんをもっとモッサリさせたみたいな感じ。とはいえ、大トカゲとトサカついてるワニのローリング対決とかクマっぽい何かとの攻防の迫力はなかなかのもの。全く本編と関係ないけどね(笑)

冒頭の世界創世についてのナレーションから闇と光の二面性を何度も描いている通り、光の清々しさとともに必ず付き従う闇をSF要素とミックスさせて前面に打ち出してるのは、コーマンらしさだし、その二面性がキッチリと現在ないし未来への警鐘として嫌〜なムードを作り出すのも50年代のSFって感じがして、やり口のわざとらしさ含めて好き。

内容的にはチープで古臭いんだけど、利己的な欲求とそれを覆い隠すための大義名分的な隠れ蓑こそが最終的な破滅をもたらすっていう普遍性を忍ばせるのもコーマンらしいし、BOXの中では一番好きでした!
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