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フォーリング・エンジェルスのbのレビュー・感想・評価

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60年代アメリカのとある中流家庭の心性と風刺

かつてダンサーという夢があったけど結婚でそれをあきらめ元軍人の絶対に敵う相手ではない夫と60年代のウーマンリブの風潮とで板挟みになって家で静かに自滅していってる母

訓練という名目のもとソ連がミサイルを撃ってきたとうそぶいて家族全員を二週間地下シェルターに閉じ込めるという死ぬほどストレスたまることをしてくれる冷戦下におけるアメリカそのものを表してる保守的で父権的な父親

ともすれば娘は保守的で父権的な親のイメージから離れたヒッピーみたいな男を好きになるだろう、
だいたい想像通りの革命思想を持ったヒッピーみたいなよくわからない男を好きになってその影響から部屋にチェゲバラのポスターを張り出す負けん気の強い性格の次女
レズになる長女、どこの馬の骨なのかよくわからない男とカーセックスしてる三女
キレながら娘の部屋に上がり込んでチェゲバラのポスターをひっぺはがす父親
ソファに座ってテレビをぼーとみて何もしない昼行燈の母
家族映画らしく個性が強く出てる
どうせこの二人別れるだろうという娘たちの異性関係は展開が読めるのも含めて見ていてつまらないし、イライラするし辛いものがある
こうなるとシングルマザーになる可能性もあるけど案の定、三女がラストでそうなる
シングルマザーとか権威的な父親が妻の死によって、急にしおらしくなっていく展開とか、かつての強いアメリカから徐々に衰退していくアメリカの未来をこの一つの家族にうまいこと暗示させてる

父親は気の短いやつで怒ったら直接、暴力は振るわないものの物にはあたるという男で、でも家庭は自分なりに大事にしてるというそれはそれで厄介な人物として描かれてる
独裁的で娘たちはものすら言えず逆らえない共産主義のような家庭の光景はアメリカが対立していたソ連と同じじゃないかという父親への皮肉と見ていいだろう
娘たちは反抗したくてもできないのだ。だから結果的に何が言いたいのかわからない、わかりづらい映画になってる
父に反抗心を持つ次女、母を憐れんでる三女それぞれ考えてることはわかってキャラははっきりしてたが唯一長女がヘラヘラしていていまいち何考えてるわからない、というか何考えてるかわかならないは何も考えてないということだから、まあ浅い人物だった。普通、長女が葛藤一番多くなりがちだろと思ったが

ジョンレノンとオノヨーコ?のふたりが仲良くしてる姿をテレビで見てる姉妹の描写があったが家庭に抱く理想と必ずしも上手くいかないことの対比だったんだろうけど、さりげなさすぎてわかりづらい。映画の舞台は1969年でふたりが結婚したのも69年だったみたいだから、合わせたといえそうだけど、そもそも69年は音楽の歴史でもすごい年でいろんなロックバンドが注目された年らしいけど年頃の娘たちの間に音楽の話が話題として全然出てこないことで娘たちが抑圧されてることを表したかったのかもしれない
この映画の何が違和感かというと娘たちが全然が若者っぽい会話をしてないというところ

衰弱していく母を助けながら、しかし権力を持つ父親にははむかえない、親に苦労する三姉妹
一回観ただけだから全部は拾い切れてないけど全体的に家庭崩壊とか酷いものではないけど、よくこれで家庭崩壊しないなというギリギリのあたりを維持しながら家族ってめんどくさいというアンニュイな世界観がコメディ交じりに微妙なテンションで進む印象だった
コミカルで笑えるシーンこそあるが、根底にあるのは女性の辛さ、とりわけ子供
2003年の映画だけど90年代の映画っぽい雰囲気
ちなみにfilmaには未登録なものの同タイトルでしかも同じ年制作の映画が存在してるので紛らわしい
(もう一個のほうは正確にはタイトルに複数形のsはついてない)

もっとこうイノセントな話かと思ってたら、思いのほかドメスティックで風刺的だった。だってこんなジャケなら恋煩いの女の子の話とか想像するだろう
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