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イングロリアス・バスターズのHKのレビュー・感想・評価

3.3
何度も言ってますが、タランティーノ監督作はひととおり観てますが好きなのは初期の3本だけ。
最近その3本を観返すとやっぱり面白かったので、その後の作品も観返すべきか迷ってたところ、U-NEXTの配信が今月いっぱいの本作をみつけて、とりあえず再鑑賞してみました。
タランティーノの大ヒット作ですが、私としてはやはりかなりランクダウン。

いや、クリストフ・ヴァルツは名演だし、ブラピのドン・コルレオーネ風のバカなノリも嫌いじゃないし、面白い要素もいろいろあるんですが、私にとってはいくつかの看過できないマイナス要因がそれらを台無しにしており、初期の3本のように素直に楽しめません。

まずひっかかるのは、先日『ジャッキー・ブラウン』の雑感でも触れた『キル・ビル』以降の音楽の使い方。
本作の場合、まずオープニングは『アラモ』のテーマ。これはまだカバーだからいいとして、その後はエンニオ・モリコーネのオンパレード。それも全て他の映画のサントラの流用。
当たり前ですが、これらは本来、他の映画のために作られた曲であり、知っている映画なら聴くとシーンの細部まで頭に蘇ったりもします。
他人が撮った映画の曲だけを映像と切り離して使い回し、その映画やそのファンに対してなんとも思わないのでしょうか? 私なんぞ中学の運動会で大好きな『大脱走』のサントラが使われた時、イメージ崩すな!せめてカバー曲にしてくれと思ったものです。

本作ではモリコーネやリズ・オルトラーニなどマカロニ組の他にも大御所エルマー・バーンスタインやラロ・シフリンなどの曲がかつてのTV特番のごとく流用されています。
モリコーネ自身も、この作曲家の意図を無視した音楽の継ぎ接ぎは気に入らなかったらしく、『ヘイトフルエイト』のアカデミー賞受賞でタランティーノに懐柔されて和解(?)するまでは、本作にも『ジャンゴ』に対しても周囲に苦言を呈していたとか。

モリコーネが大好きなのはわかりますが、だったら『ヘイトフル~』でせっかくテーマ曲を書いてもらったんなら『エクソシスト2』や『物体X』など過去の曲は流用せず、全編新しく書いてもらえよ!と思ったのは私だけでしょうか。

それに、例えば『ワンス・アポン~ハリウッド』で話題になったブルース・リーの扱いも親族やファンなら怒って当然だと思うし、口では散々リスペクトと言いながら、どうもその人や作品の扱いがことごとく雑に感じます。
本作以降の歴史改竄は弱者を代弁していて爽快だという人もいるようですが、私は本作でナチスをバットで虐殺しても愉快じゃないし、『ジャンゴ』で黒人が白人をリンチしても胡散臭いし(たしかスパイク・リーも抗議してましたね)、どうもタランティーノのオタク自慢のドヤ顔を延々見せられているようで正直ウンザリ。
とくに期待してただけに2本のスプラッタ西部劇に至ってはガッカリでした。

『イングロリアス・バスターズ』の雑感のはずが、他の作品のことまでゴチャゴチャ書いてしまい思いのほか長くなりました。ここまで書いちゃうと他の作品はもう観返す必要はなさそうです。
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