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イングロリアス・バスターズのkuuのレビュー・感想・評価

4.0
『イングロリアス・バスターズ』
原題 Inglourious Basterds.
映倫区分 R15+
製作年 2009年。上映時間 152分。
クエンティン・タランティーノ監督とブラッド・ピットがタッグを組んだ最強のアクション大作。
タランティーノは、ほぼ 10 年間脚本に取り組んだそうです。
ナチス占領下のフランスを舞台に、それぞれに事情を抱えたクセのある登場人物たちの暴走をユーモアたっぷりに描く。
メラニー・ロランやクリストフ・ヴァルツ、ダイアン・クルーガーなど各国を代表する俳優たちがこれまでにない役柄を喜々として演じている。
歴史的事実を基に作り上げられた、奇想天外なストーリー。
映画のおよそ(あくまでも私的感覚で)30% 英語で話されており、他の言語はフランス語かドイツ語で、イタリア語が少しあり、これは、ハリウッドのプロダクションとしては非常に珍しいことかな。

始めに、今作品のタイトル『イングロリアス・バスターズ /INGLORIOUS BASTERS』は、イタリアのB級マカロニ戦争アクション映画『地獄のバスターズ THE INGLORIOUS BASTARDS』(1976年の作品ですが日本未公開)からきてるそうで、タランティーノお気に入りのマカロニ映画界が誇るB級映画監督は巨匠エンツォ・カステラッリ。
その話で考えたらこのタイトル『バスターズ BASTERDS』は、BAST"E"RDSスペルミスは、ただ単のミスなのか、意味があるのかタランティーノしか分からない。
だけど、タランティーノ監督自身はインタビューには
"Here's the thing. I'm never going to explain that. You do an artistic flourish like that, and to explain it would just take the piss out of it and invalidate the whole stroke in the first place."
ここにそれがあるってだけのことや。俺はぜったいにそれを説明しようとは思わない。
キミたちは芸術家ぶっていろんなことを云うだろ。
説明したら何もかもぶち壊しになっちゃうからね。
って述べてる。
その真意は今作品を観たあと各々が、嗚呼、タランティーノ間違えよったorいやいや、彼の深い美学があるんだ。
なんて考えてもエエんかなぁと。

今作品はフィクションですが、戦略局の作戦『グリーンアップ作戦』(実在のGREENUP というコードネームで呼ばれる連合軍のスパイが行った活動)に部分的にインスパイアされたものだそうだ。
そんな今作品は、1941年、ナチス占領下のフランスの田舎町で、家族を虐殺されたユダヤ人のショシャナ(メラニー・ロラン)はランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)の追跡を逃れる。
一方、“イングロリアス・バスターズ”と呼ばれるレイン中尉(ブラッド・ピット)率いる連合軍の極秘部隊は、次々とナチス兵を血祭りにあげていた。
やがて彼らはパリでの作戦を実行に移す。。。

クエンティン・タランティーノ監督は、客観的に見ても物議を醸す人物と云える。
1992年1月、サンダンス映画祭で『レザボア・ドッグス』がデビューして以来、彼はずっとそうであり続けているんちゃうかな。
タランティーノの毒性はかなり強烈。
強烈故に『毒を食らわば皿まで』って大袈裟だけど、毒を感じて敬遠する人もおられるとは思います、また逆も然り。
この監督を好きになるのは大変なことやけど、彼には映画界に何かの偉大さをもたらす瞬間があり、それを無視することはできない。
その一例が今作品『イングロリアス・バスターズ』で、彼の血の気の多さ、スタイル、そして映画への愛が驚くほど建設的に融合された作品やと云える。
今作品には、タランティーノの特徴が染み出た作品やったかな。
気の利いた会話、一見重要そうに見える登場人物をあっさり見捨てる姿勢、ホンでもって、会話から生まれる緊張感のある巧みな瞬間がある。
今作品は、『レザボア・ドッグス』や『パルプ フィクション』のような形式的なインパクトはないものの、彼が大規模なアンサンブルをまとめ、彼の作品の中で最高のものを愛せる映画を作った瞬間と云えるんちゃうかな。
今作品の一番最初のシークエンスは、恐ろしいナチス、ハンス・ランダ大佐の紹介であり、延いてはクリストフ・ヴァルツという俳優の紹介でもある。
ヴァルツは、一貫して表情を変えながら、登場人物の精神の鋭敏さを示し、スクリーンを支配していた。
彼は部屋に入った瞬間から、ドレフュス一家に何が起こったのか、どこに隠れているのか、正確に把握しているよう。
しかし、彼らを隠そうとするフランスの酪農家を論破するやり方はお見事。
ヴァルツはシークエンスの中でドイツ語、フランス語、英語を行き来するだけでなく、誤った安心感に誘い込むとこなんな巧いなぁなんて感じる。
ナチスの中には魅力的な人物もいることを認識させる、画面上での数少ない描写のひとつと云える。
また、彼は映画の残りの部分に大きな影を落としてて、1時間後に彼が戻ってきたときひゃっと氷が走るよう。
そして、女性映画館館主(ロラン)はランダによるドレフュス一家への攻撃から唯一生き延びただけでなく、SSの死とナチス帝国の崩壊をもたらす未知の変数となるが、彼女とランダの再会時、ランダが去ったあとのロランの気持ちが良く分かる。
タランティーノが好んで使うポップさ。
暴力が炸裂し、音楽が完璧にクレッシェンドすると、タランティーノは観てる側を映画の中に閉じ込めてしまう。 
また、今作品では、何を云ってもブラッド・ピットがこの作品にもたらした楽しさ、興奮を無視することはできひんかな。
確かに、彼はアルド・レイン中尉役でオスカーに値する演技をしているわけではないかもしれない。
彼のアクセントはなんか大げさやしシラコ過ぎる(シラコいは白々しいやわざとらしいという意関西弁)。
衝撃的な髪型もよく持ちこたえてるし、顔は常にひん曲がってる。
しかし、彼は自分の映画スターダムに対する侮蔑を込めて台詞を吐き出す。
おそらく、彼のキャリアの中で、彼の性格俳優としての資質を思い起こさせる演技はないやろう。このシーンは、ドニー "ザ・ベア・ジュー "ドノヴィッツ(イーライ・ロス)とヒューゴ・スティグリッツ(ティル・シュヴァイガー)の紹介とダブるところがある。
この3つのシーンの組み合わせは、面白く、痛快で、これから起こる出来事に興味を抱かせるものです。
そして、今作品劇場公開当時は多くの人にとって、マイケル・ファスベンダーはまだ有名人にはなっていなかったとは思う。
今作品は、誰にとってもそうであるように、彼のカリスマ性と独自のスタイルにとっての御披露目やったと思う。
なんか、俳優さをを書き並べたら枚挙に暇がないし、尻切れトンボながら、良く分からん感想になりましたが🙇。
今作品はファンにとっては巧みなタランティーノ映画の一つですし、爆発的でエキサイティングでありながら、深くてよく考えられた作品やと思います。
言語が多様なため、字幕をたくさん読むのに慣れるまで少し時間がかかるとは思いますが、それがこの映画をより魅力的にしているのだと思います。
※タランティーノの映画で注意しなければならないのは、血みどろの暴力があることを覚悟しなければなりませんので(老婆心ながら)。
今作品は、『ジャンゴ 繋がれざる者』や『ヘイトフル8』を含むタランティーノの歴史大作シリーズの幕開けとなった作品でもあるし、ドイツ映画が好きな人、推し俳優や、ブレイクしたスター(ヴァルツ、ファスベンダー、ローラン、ブリュールなど)が好きな人、単にナチスを殺したい人など(失礼)、今作品は時の試練に耐えるれば楽しめる作品やと思います。
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