このレビューはネタバレを含みます
【 すべてを焼き“KILL” 】
念のため本作は、史実とは異なる“タランティーノ流”である。やはり最高におもしろい…。あらゆるところに“タランティーノ流”を感じる傑作である。映画にまみれているともいえる巨匠が、作中で大量のフィルムを燃やして敵を討つというシナリオを編み出したというのもまたおもしろい。そうなのだ。フィルムはよく燃えるのだ。
上述のように本作は、思い入れのある映画館を焼き払い敵を一掃するシナリオである。実行犯のひとり、ショシャナが自らがエンディングに登場して敵を罵り点火の合図をするシュチュエーションも最高だった。ちなみにショシャナはその少し前に悲劇を迎える。
レインもやはり素晴らしい。己の実力もそうだろうが、あの時代にあんなに上手く生き抜ける行動力には舌を巻く。敵の頭の皮を斬り剥ぐという残虐性も突き抜けていた。ちなみにその描写は“しっかり”ある。バレバレなイタリア人に成りきるところは爆笑してしまう。
そしてなんといっても、ランダである。滲み出る凶悪なオーラが凄まじい。それは数々の会話・やりとりを観れば一目瞭然。やること言うことがまたオシャレなのも怖い。クリームパイにタバコをジュボッと刺すのが印象的。
ラストは今までの怨念の鬼火が灯るかのように轟々と映画館が燃えていた。かつての仕打ちを焼き尽くす、執念と怨念が、映画館を包んでいた。