似太郎

イングロリアス・バスターズの似太郎のレビュー・感想・評価

3.7
【映画というよりCM】

全編、タランティーノらしく映画オタクの脳内世界が反映されている。はっきり言って現実味は『キル・ビル』同様にゼロで自閉的・自己補充的な雰囲気がプンプン漂っているから困ったもの。大量の台詞廻しに間延びしたルーズ感。複雑怪奇でバカに単純。

別にシネアストの方がアルチザンよりも優っているとは思わないが、この監督の中で「作家性」を無理矢理出そうとしている一種の背伸び感がどうも昔から苦手意識がある。ある意味ヴィンセント・ギャロ的な厨二、自慰行為的な気色の悪さを感じてしまう。素直に楽しめないのはその所為?

複数のエピソードを同時進行させ、最後で収斂させるアプローチが手慣れていないため、大いに違和感を覚えるラストだった。「俺はありとあらゆる映画を知り尽くしてるぜ!」といった劇中のアジテーション(自己宣伝)の方が本編よりも勝っている。

辛口で知られる映画評論家の江戸木純がタランティーノやウェス・アンダーソンを徹底批判するのは、そういったオタク監督特有の「狡猾さと底の浅さ」にある。たしかにその気持ち、分からないでもない。

この手の【作家性商売】はある意味、ユーロスペースや映画美学校で売っている物差し📏を強引に売りつける行為にも近い。なんか恥ずかしい…。
似太郎

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