垂直落下式サミング

別離の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

別離(1939年製作の映画)
3.5
バイオリニストとして活躍する男と、その娘にピアノを教える家庭教師として招かれた女性が、雇用関係を超えて男女の関係となる。禁断の恋系の作品。
音楽家としても、男女としても惹かれあい、強い愛情で繋がったふたり。相乗り演奏旅行で束の間の幸福に浸るのだが、妻子ある男の苦悩を察し、女は身を引いて去る。ありがちなメロドラマの結末なんですが、男が苦悩しているようにすら見えないのが潔いっていうか…。
コイツは、なにも主体的に決断していない。妻と子供への後ろめたさからずっと逃げていて、それに感づいた若い女が彼の前から去ったことで、仕方ないからもとの家に帰ってくるロクデナシ。ホント意志薄弱でどうしようもない奴。目の前で娘が轢かれるところ、けっこうショッキングなのに、この期に及んでウジウジするじゃん。死ねよ。
気が大きくなっちゃったロリコンじじいが、なんか救われて終わり。めでたし、めでたし。人でなしは許されて、泣きをみる内助の功。端からみれば、マジろくでもないおはなしなんだよな。
物語はじじいの不倫な訳で、不道徳なイチャコラの裏で奥さんと子供たちがどんな思いで生活しているのか心配のほうが先にたってしまい、肝心のロマンティックな部分には、終始のめり込めなかった。
「不倫は文化」とか言い出しそうな悪気のなさがイヤ!悪いと思ってんだったら、カッコつけるんじゃなくて、せめて申し訳なさそうにしといてほしい。白黒時代ハリウッドメロドラマに出てくるスケコマシ男のイキりっぷりなんなんでしょうね?恥ずかしくないの?
ぼやかしなしの欺瞞。これが、美しい物語とされる時代なのかね。70分の作品であるから、人物の描き込みが薄いおかげで、変な情が入る余地がないのはよかった。もし、各人物の内面がそれぞれガッツリ描かれてたら、奥さんの気持に寄り添いすぎてブチキレちゃったかもしれない。
不倫系のなかでは、なかなかみれるほう。クラシック音楽が終始お洒落な雰囲気を演出。それよりも何よりも、観客の視線を力強く画面に引き付けるのは、ヒロインのかわいさっ。ピアニストの卵として出てくる若先生のイングリッド・バーグマンが優勝。激烈かわいいっ。彼女のハリウッド進出作だとか。
ズルい。ズルいよなぁ!僕はどんな理由があろうと断固として不倫ダメ派なのに、こんなにかわいくちゃあ、仕方ないって思っちゃうじゃん!(意志薄弱)