Omizu

ボストニアンのOmizuのレビュー・感想・評価

ボストニアン(1984年製作の映画)
4.0
【第57回アカデミー賞 主演女優賞、衣装デザイン賞ノミネート】
『日の名残り』ジェームズ・アイヴォリーがヘンリー・ジェイムズの同名小説を映画化した作品。全米映画批評家協会賞では主演女優賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)を受賞、アカデミー賞では主演女優賞と衣装デザイン賞にノミネートされた。『クルエラ』でアカデミー賞を受賞したジェニー・ビーバンが最初にノミネートされた作品でもある。

配信にもないしソフトもなかなかなく、英語版を買ったところで日本版ソフトを発見、購入した。やはりアイヴォリーはいい。大好きな作家だ。

アイヴォリー自身が同性愛者だということもあり、本作もフェミニズム、同性愛的な趣向が前面に出た作品である。

若く可愛らしいヴェレナ(ヴァネッサ・レッドクレイヴ)を巡って奪い合う女性解放運動の活動家オリーヴ(ジェシカ・タンディ)と弁護士でミソジニストのベイジル(クリストファー・リーヴ)の三角関係を優美に描いている。

ヴァネッサ・レッドグレイヴももちろん素晴らしいけど、ジェシカ・タンディも素晴らしい。『ドライビングMissデイジー』のイメージしかなかったけど、こんなにいい俳優だったのか。『スーパーマン』でお馴染みクリストファー・リーヴも素晴らしい。アイヴォリーは役者を輝かせるのが本当に上手い。

正反対の二人に愛されるヴェレナ、彼女の決断は苦しいものだった。終盤、彼女を探すオリーヴが痛々しい。

しかしそこで終わらないのがすごい。オリーヴは強い。決して自分を曲げたりはしない。フェミニズムや同性愛を否定する映画なのか、と思うのだがそうではない(まあアイヴォリーである以上そんなことは100%ないのだが)。オリーヴは今までできなかったことを自分でやり遂げる。自分に正直に生きることを説いた素晴らしい作品。

優雅なカメラワークに19世紀の美しい美術と衣装、アイヴォリーらしい艶やかさが存分に出ている。『日の名残り』に次いで好きな作品。
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