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ルージュのasaakimのレビュー・感想・評価

ルージュ(1984年製作の映画)
3.1
劇中に数分だけ出てくる、日中はレストラン営業のカフェバーの壁に貼られたポスターのひとつが『カメレオンマン』(監督ウディ・アレン)。この映画の日本公開から約一ヶ月半後に本作は封切られたのだから、撮影されたのは、だいたい1984年の5、6月頃かと思われる。当時というか、その後も販売されていた裏ビデオの肝心の中身は、タイトルと申し訳程度の数分の映像だったり、タイトルとは無関係の映像であったり、ということもあったのが実情で、詐欺商法のひとつとして成立し、稼げていたという真の裏事情が、脚本執筆上の大きなヒントになったと察せられる。それを知らずに観ると、村木の人物像の理解に若干の影響があるかもしれないが、彼以外の主要登場人物も、この裏事情については全く把握せぬまま、物語は進行してゆくので心配ご無用。
ところで、名美には雨とネオンがつきもの。顔力でみせる新藤恵美の全裸の後ろ姿を雨の中に浮かび上がらせる一方、ネオンは、後景に置かれた「沢の鶴」のものくらいか。この映画が撮影された1984年の横浜といえばディスコ「サーカス」が開店し、夜のきらびやかさも加速してゆく最初の年。そうなる直前特有の暗さを捕まえた作品であることが、古き佳き横浜のイメージを集約させた"横浜ホンキートンクブルース"(のカヴァーヴァージョン)で始まるタイトルバックで告知されているかのよう。そういった対比は、重要な舞台となる(米軍関係者払い下げの)バーの、通りを挟んだ真向かいに、若者たちの溜まり場があるという位置関係にも如実だ。
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