このレビューはネタバレを含みます
率直な印象では、割りと面白く見れた。
ストーリー自体はとてもシンプルながら、メインの登場人物が御者と保安官込みで9人と多い。
彼らは始まりから終わりまで終止出演している。故にパッと見の画は殆ど変化がない。
そんな彼らの人間模様を描きながら物語は進んでいく。
ポイントは意外性、だったように思う。
各人物それぞれに、裏の設定とも言うような隠れた一面があった。
飲んだくれだけどやるときはやる医者や、ばくち打ちが実は貴族だったり、なにかしらの秘密をもった看護師に、悪徳銀行員、など。
復讐に向かう脱獄犯に銃を貸してしまう保安官もなかなか粋。
見る人を飽きさせない為の、登場人物の意外性と、各所に魅せる彼らの粋な行動に惚れてしまう、そんな作品かなと感じた。
ハッピーになるべき人がハッピーになる、気持ちがいい映画だった。
アパッチから逃げるために、馬が疾走するシーンは現代にも通じる迫力満点な映像で、当時どのように撮影したのか、とても興味深い。
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*追記(他の方のレビューを読んで)
本作の映画史における文脈まで考えが及んでいなかった為、とても勉強になった。
元々、西部劇は無声映画時代からあり、アクション中心の物で衰退気味だったそう。トーキー映画が出始めると、これからは映画のスタイルは人の会話に焦点を当てた人間劇になっていくと言って、人気が薄れていたとか。
そんな中で本作は、これまでアクション映画に無かった「人間ドラマ」を脚本に入れ込む事で、アクション映画の可能性を大きく広げた、との事。現代に続くアクション映画の礎を作った作品であると。
非常に興味深い内容だった。
市民ケーンのオーソンウェルズ監督や、小津監督、黒澤明監督らも多分に影響を受けていたという事。オーソンウェルズ監督は40回も見て勉強したとか。同じ映画を40回見るって言う事をしたことがないので、文字通り穴があくまで見たんだろうけど。何をノートに書きとったのか、気になる所。
受け売りが多くなってしまったが、こうした映画史における位置づけを知るのは面白い。
「この作品を見たあの人が、次にあんな作品を作った」
そんな部分が知れると、映画のシーンの絵作りに理解が進み、学びが深まる。
最後に、
黒のAと8のツーペアが、デッドマンズハンドというのは、格好いいと思った。