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検察官/勾留のあのレビュー・感想・評価

検察官/勾留(1981年製作の映画)
4.8
手堅い!これは手堅いとしか言いようがない!

ミレールはやっぱり顔の手数が多いですね。役者の表情を常に信頼しつづけることが、ストーリーテリングに大きく寄与しているのが、取調べ室という空間に限定されることによってはっきり浮かび上がってきていました。

そして「愛していると伝えて」のフェルメールと同様、殺害された少女や灯台、廊下、10年前のクリスマスのサブリミナル的な挿入のタイミングが抜群で、閉塞的になりがちな室内劇に程よい風通しを与える様は、「未知への飛行」で挟まれる戦闘機のコックピットのようでした。ある意味ルメットっぽかった気が。早く「十二人の怒れる男」見なければ...!

10年間15メートルの廊下が隔て、同時に開いたらどちらかが必ず死ぬ夫婦の禁断の扉を開けてしまったことが、トランクの死体によって唐突に知らされる時、改めてガリアンのような冷静沈着な人物により行われても、勾留には非人道性があることが明らかになると共に、推定無罪の重要性がさりげなく提示される巧妙さが、元日の曇天下、マルティンの絶叫とガリアンの無表情という簡潔なラストに集約されるミニマルさがかえって残酷でした。

人の領分に土足で上がってまで探さなければならない真実と、その代償。禁断の扉を会話劇で開けていくスリルに満ちた秀作でした。
あ