ガリガリ亭カリカリ

アウトレイジのガリガリ亭カリカリのレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
4.1
北野武監督作品というよりも、黒沢清が監督したヤクザ映画みたいなルールで撮られていると思う。暴力装置が可動し、可動しちゃったら最後、誰にも止められない、ってか誰も止めようとしない、みんな巻き込まれて死んでいく、暴力だけが動き続けているだけ、というゲーム。全くヤクザ映画っぽくないニヒリズム。

たけしの映画でいちばん車を撮るのが上手い。ってかエロい。列を成して走行する真っ黒ツヤツヤ高級車にタイトルどーんとか素晴らしい。真っ黒高級車が列を成して停車しているだけで全部物語れちゃってるのもすごい。
車を使った怖すぎる殺しまであって大サービス。

椎名桔平と三浦友和が最高。特に三浦友和がほとんど何も演技してないことによって、ちゃんと怖さを持続させているのがすごい(現場でほとんど監督からの演出も会話もなかったらしい)。

黒人いじりさえなかったらもっと好きだった(倫理的にというよりも、ヘビも穴掘らせシーンもつまらない)。

バカみたいな終わり方のキレっぷりが『首』と接続している。感動なんかさせる気がない呆気なさが、本作と『首』の魅力に他ならない。

青山真治が「画面ではなく台詞で小津をやっている」と評していて、台詞の語尾に「〜このやろう」とか「〜ばかやろう」と言わせ続けることによって台詞が小津化しているという分析で、シネフィルって変態だな……と思った。