ダンクシー

アウトレイジのダンクシーのレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
4.5
「水野、お前隠れろ。1人ぐらい生きてねえとよ、結果分かんねぇじゃねぇか」

ようやくアウトレイジを観た...!全員極悪人すぎて最高!!
北野武は人間の邪悪な部分や闇をイヤなほど抉り出して表現するセンスが高すぎる。そして今回彼は裏社会に生きるヤクザがどれだけ狡賢くて汚くて醜い連中なのか、どんな手を使うことも厭わない連中なのかを、断言するかのように描いてみせた。身内だろうが部下だろうが兄弟分だろうが誰でも構わず騙して脅す。とんでもないヤツらなのだ。親子や兄弟の絶対的な関係はあくまでも表向きの関係で、上からの命令には逆らえない。そんな上からの命令が組織をどんどん崩壊に向かわせる構成はお見事。
勿論観ていて笑えるシーンも多くあるので、エンタメとしてのさじ加減も巧かった。大使館のくだりは全部悪意とブラックジョークに満ちててバカ笑った。

「俺らヤクザだってこと忘れてねぇよな?」

北野武の15作目がアウトレイジ。たけしらしいノワール節が炸裂していた。ちょっとオモロすぎる。たけしの作品の中では比較的エンタメよりなんだけど、美を感じる場面も多々ある。バランスが抜群。
しかし、好みはかなり別れるだろう。アウトレイジでたけしは劇中における芸術性を捨てている。汚い悪人達の潰し合いという点にフィーチャーし、悪意に満ちた表現に完全に振り切っている。明らかに男向けの作品なのだが、男でも嫌悪感を感じる人も多いだろう。自分はめちゃくちゃ面白かったですけども。

「遠慮しないでどんどん食えよ。全然、手ぇつけてねえじゃねえか。ほら、兄弟も食えよ、ほら。おおう、食えねえか、ふふふっ」

殺し方に、たけしの美徳をとても感じる。ただ普通にチャカで殺すのではなく、状況やヤクザらしい恐ろしい手法、かつ観ていて面白い、どこが芸術的に感じる殺し方ばかりだ。一筋縄ではいかない、普通は思いつかない発想の数々。新幹線での銃殺、石橋蓮司の歯をドリルでぐちゃぐちゃにするシーン、ラーメン屋での箸耳ぶっ刺し&指切断のくだり、舌を出させて殺すシーン、紐を首と道路の柵に繋がれて車が走り投げ出されるように絞殺されるシーン。とにかく言い出せばキリがない程だ。特に、首に紐を繋がれての絞殺のシーンは、芸術的としか言い表せられないレベルの美しさを感じた。透き通った海をバックに、車が走り絞殺される。北野武がゴダールから受けた影響の片鱗を感じた。こんなに美に満ちた死に方なら、どんな役者でも文句は言えまい。


この映画が面白くねぇ...?うるせぇバカヤロー!ぶち殺すぞコノヤロー!…なーんて言いたくなっちゃいます。
ダンクシー

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