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アウトレイジのnetfilmsのレビュー・感想・評価

アウトレイジ(2010年製作の映画)
4.0
 黒塗りの車が並ぶヤクザの列、関東一円を取り仕切る巨大暴力団・山王会本家の酒宴の席、関内(北村総一朗)がお茶を一杯飲み干して帰ろうというと、加藤(三浦友和)が池元(國村隼)を最後に呼び止める。山王会の直参(二次団体)の池元組組長の池元が麻薬を扱う村瀬組と兄弟杯を交わして親密になっていることを、関内と加藤は快く思っていなかった。そこで関内は加藤にこの2つの組を仲違いさせようと企て、池元に対して「村瀬を締めろ」と無茶な命令をする。ボッタクリバーで客引き兼恐喝係を務める飯塚(塚本高史)の誘い、ヤクザに見えない岡崎(坂田聡)を騙して60万円の取り立てを要求する飯塚は見事に大友組の罠に落ちる。大友組と村瀬組の血で血を争う抗争の果てに、木村(中野英雄)が指を詰め、歯医者で治療中に急襲された村瀬(石橋蓮司)はヤクザを廃業する。やがて強引な取り立てと麻薬取引により組織を拡大した大友組は、治外法権のグバナン共和国在日大使館大使(ハーシェル・ペッパース)を騙し、違法カジノにも手を出す。マル暴の刑事の片岡(小日向文世)はそれぞれの組から賄賂を受け取り、自分からは動こうとしない悪徳刑事だった。山王会池元組若頭・小沢(杉本哲太)は加藤の命を受け、大友組と村瀬組の抗争の最中、池元組の新たな組長になろうと目論んでいた。

 今作において、もはや『3-4x10月』や『ソナチネ』、『BROTHER』のような昔気質で親分に忠実なヤクザは脇に追いやられる。「全員悪人」というキャッチフレーズにもあるように、ここにあるのは私利私欲に塗れた一匹狼たちの欲望の姿である。関内を中心にした山王会本家の縦社会の構図は一見纏まっているかのように見えるが、立身出世の欲望がえげつない裏切りを繰り返し、組織の犬はあっさりと裏切る。それは刑事さえも例外ではない。その中で北野武は自分自身と村瀬組若頭の木村(中野英雄)とを昔気質のヤクザの部類に置き、クライマックスから『アウトレイジ・ビヨンド』での結託になだれ込む。全員皆殺しの陰惨さなクライマックスは『BROTHER』と同工異曲の様相を呈するが、クライマックスだけはまったく違うラストを迎える。乾いた暴力を標榜した21世紀の新しいヤクザ映画は、90年代のヤクザ映画から俳優陣を刷新し、キタノ映画をまったく新しいタームへと導く。当初、加瀬亮が演じた石原役には加瀬亮ではなく、押尾学がキャスティングされていたが、もし押尾がそのまま出演していたら3部作の大河ドラマのようなボリュームは存在し得なかっただろう。ヤクザたちのクローズ・アップと不気味な自動車の移動を切り取る柳島克己のカメラワークも秀逸で光る。
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