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ザ・パッセージ/ピレネー突破口の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
J・リー・トンプソン監督作。

二次大戦時、ナチス占領下のフランスから隣国スペインへの脱出を図るユダヤ人家族と雇われガイドの姿を描いた戦争サスペンス。

ブルース・ニコライセンの戦争小説「Perilous Passage」を『ナバロンの要塞』の名匠:J・リー・トンプソン監督が映像化した戦争サスペンスの隠れた傑作で、アンソニー・クイン、ジェームズ・メイソン、マルコム・マクダウェル、クリストファー・リーら癖の強い実力派俳優達の競演に魅了されます。

ナチス・ドイツ占領下のフランスから安全な隣国スペインへ妻子を連れて脱出を図ろうとするユダヤ人科学者(J・メイソン)と、彼らの案内役を引き受けたバスク人ガイドの主人公(A・クイン)が、スペイン-フランス国境沿いに鎮座する深雪のピレネー山脈を越えて国外脱出を果たしていく姿を、ユダヤ人科学者逮捕に執念を燃やすSS将校(M・マクダウェル)との緊迫の追走劇&攻防を織り交ぜ活写しています。

いわゆる“脱出型”の戦争映画ですが、本作では主人公らの行く手を阻む存在としてピレネー山脈の過酷な自然環境が挙げられます。雪と岩に覆われた急斜面の山肌が主人公一行の前に立ち塞がり、まともな冬山装備を持たない彼らは山脈横断の過程で心身ともに疲弊していきます。実際にピレネー山脈でロケした風景が画面の寒々しさを助長していて、クライマックスの大雪崩シーンでは特撮では作り出せない本物の迫力に圧倒されます。

前方にピレネーの過酷な自然障壁が待ち受ければ、後方にはユダヤ人逮捕に執念を燃やすSS将校の執拗な追跡があります。若き日のマルコム・マクダウェルが妄想と狂気に憑りつかれた将校を怪演していて、彼の存在が主人公らの脱出行に只ならぬ緊張と恐怖を与えています。

本作の内容は「出エジプト記」になぞらえています。この場合、モーセ=バスク人ガイド、エジプト兵=SS将校、紅海=ピレネー山脈となります。
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