次男

ディフェンドー 闇の仕事人の次男のレビュー・感想・評価

3.6
ずっと見たかった作品があって、満を辞して借りてきてみれば、店員さんのパッキングミスでこのDVDが入ってた。
失礼ながらこの映画のことは微塵も知らなかったが、このまま返すのもしゃくだし、ディスクにプリントされた安っぽいヒーローに少し惹かれたので鑑賞してみると、…うん、意外と悪くない!

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知的障害を抱えたアーサーは、現場作業員として働いている。しかし夜が更ければ、自前のコスチュームとフェイスペイントで正体を隠し、子供の玩具レベルの武器で悪人を退治するヒーロー「ディフェンドー」となるのだ!
ある晩、パトロール中に売春婦でヤク中の少女、キャットを助ける。彼女は問う。「なんでこんなことやってんの?」 「“暗黒街の総帥”を倒すためだ。」
彼女は笑いながら答える。
「私そいつの居場所知ってるよ…?」

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正義ってエゴと表裏一体だと思うし、だからこそそれを後ろ楯も大義名分もなく「自警」っていう形で実現するどのヒーローたちは悩んでいたんだと思う。
これはきっと間違いではなくて行きすぎた正義にならないように抑制しているんだろうけど。

この話の主人公、アーサーは違う。
正義とエゴのインタラクションになんか見向きもせず、自分の正義をひた走る。 だからこそ、彼の正義は良くも悪くも本来的に見えて、新しかった。抑制のかからない正義って、テーマとしてすごくおもしろいなと思った。

んだけど。

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ネタバレ
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映画のラストで、(驚いたことに)主人公は死ぬ。
そして彼の死をきっかけに事件は解決に向かい、町に平和は戻る。 町の人々は涙しながら彼を称賛し、映画的にも幕。

や、なんか薄くないか?
彼が正義を貫いて死んだから素晴らしいんじゃないだろ? 彼には「自己抑圧のない純粋な正義があった」っていう特異があって、そんな人が殉職(?)したから考えさせられるんだろ?
この展開とかラストじゃ、せっかくの「知的障害を抱えるヒーロー」っていう設定が効いてないじゃないか。

アーサーと売春をしていた少女キャットの出会い、その気持ちの変遷は素敵だった。 今さら誰も止めたり怒ったりしないことを、当たり前のように怒り、更正させようとする、っていう流れの中では、設定の本来性が生きていたと思う。 だからこそ、ラストはもう一歩言及して、なにか考え代を残して終わってほしかったなぁ。



(2010)
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