ゆみモン

稲妻のゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

稲妻(1952年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

林芙美子の同名小説を、田中澄江が脚色した成瀬巳喜男=高峰秀子コンビの名作(と言われる)。

4人の子供の父親がみな違うという複雑な母子家庭で、母と異父兄姉たちの醜さに愛想をつかした末娘・清子(高峰秀子)が、家を出て自立する過程を物語の骨子としている。
男が尊厳を失ってゆく戦後の家庭。登場人物たちも、全般的に女たちはたくましいが、男たちは情けない。

すべての登場人物を肯定も否定もせずありのままに描いている。俳優たちの好演も相まって、生身の人間の存在感が鮮烈に迫ってくる。

当時の東京という都市の息づかいを捉えている点でも出色で、清子の実家のある下町と新居の世田谷とは見事に描き分けられている。

家族たちに嫌気がさした清子は、家を出てアパートを借りて隠れ住み、隣家の兄妹・周三とつぼみとの交流の中で心洗われていく…。
その清子以外は、誰もたいして生活は変わっておらず進歩もない。しかし、アパートから二人で歩いていく母娘の姿に、何故か安堵を覚えるラストシーンである。