千年女優

稲妻の千年女優のレビュー・感想・評価

稲妻(1952年製作の映画)
3.5
各々に父親が異なる三人の兄姉を持つバスガイドとして働く女性で、シングルマザーの母の姿を見て育ったために男性や結婚に不信感を抱く小森清子。金にがめつくて自分本位な見合いを勧める長女、結婚せず自堕落な生活を送る長男、唯一気を許せるも不幸に見舞われる次女夫妻。家族の事情に翻弄される彼女の苦労を描いたドラマ映画です。

メロドラマを通じて社会における様々な形の「女性」の有り様を描く成瀬巳喜男が、代表作になった前年公開の『めし』に続いて林芙美子の原作と田中澄江の脚本で制作した1952年公開の作品で、第三回のブルーリボン賞では『めし』に引き続いて作品賞を受賞すると共に同年に公開された『おかあさん』の好評もあって監督賞も受賞しました。

これまでやその後の作品でも多く取り上げられる夫妻・家族・愛人といった成瀬流の女性映画におけるテーマを詰め込んだ物語で、それらの全てを抱えるひとつの家族を通して家父長制の歪みを描きます。やや要素の乱雑感はあって強引な帰結も唐突な印象を抱かせますが、子に産んでもらいたくなかったと言わせる社会の闇を綴った一作です。
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