エイデン

名探偵ホームズ/黒馬車の影のエイデンのレビュー・感想・評価

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1888年10月、ロンドン
探偵シャーロック・ホームズと助手のジョン・ワトソンは劇場を訪れていた
しかし観劇に来るはずの皇太子の到着が遅れ、批判的な一部の群衆の間で騒ぎとなる
無事観劇を終えた観客達のもとに、新聞売りが速報を知らせに駆け込んでくる
それは、ホワイトチャペル起きている娼婦ばかりを狙う連続殺人の3件目の新たな被害者が発見されたというものだった
それはかねてよりホームズも気にかけていた事件だったが、普段なら捜査の依頼が来るはずにも関わらず、警察からは何の接触もなかった
自室へと帰った2人は、怪しげな男達が自分達を観察していることに気がつく
彼らはホームズに会いにやって来た市民団体で、代表のメイキンズはホワイトチャペルの連続殺人犯を捕まえてほしいと訴える
貧民街であるホワイトチャペルでは警察の捜査も本腰ではなく、事件の余波を受けて商店をしている彼らは経営難に陥ってしまっているのだと言う
しかしホームズはすぐに返事をせず、彼らを追い返してしまうのだった
その不躾な態度を咎めるワトソンだったが、ホームズには何か思惑があるようだった
その頃 ホワイトチャペルで1人の娼婦が黒い馬車に拾われて八つ裂きにされ、通りに死体が捨てられていた
協力者からそれを知らされたホームズは、ワトソンを叩き起こすと現場へと急行する
フォックスボロ警部が2人を出迎えると、切り裂かれ、内臓を抜かれているという凄惨な遺体を見せる
ホームズは一通り遺体を確認すると、足元に落ちていた枯れた植物を懐に忍ばせた
そこに“血の日曜日”事件で悪名を馳せた警視総監ウォーレン卿が現れ、ホームズとワトソンを追い返すのだった
現場近くでは、「JUWESは責められないのではない」というメッセージが見つかっていた
JUWESはJEWS(ユダヤ人)のスペルミスだと考えられたが、貴重な証拠にも関わらず、ウォーレン卿は暴動に発展することを防ぐという名目で消し去ってしまう
自宅へ帰ったホームズは事件現場で見かけた不審な様子の女性への疑念を口にしていた
するとそこに匿名の情報提供者からエリザベス埠頭に来るようにという手紙が届く
情報提供者は舟に乗ったまま顔を見せず、リバーサイドのエルムズ屋敷に住む霊媒師リーが連続殺人犯の正体を掴んだと語る
何とか情報提供者の正体を掴もうとした2人だったが、そこに見回りをしていた労働者が現れて追い出されてしまう
その時、2人と情報提供者の会話を聞いている怪しげな男がいた
男は情報提供者を追い、彼が埠頭に船を着けるなり、剣でその胸を貫いて殺害してしまう
捜査を始めたホームズとワトソンは、この事件の裏に潜む巨大な陰謀が張り巡らされていることに気付いていく



名探偵シャーロック ・ホームズを題材にしたミステリー・サスペンス映画
原作にない映画オリジナル作品になっている

ホワイトチャペルの娼婦ばかりを狙う連続殺人犯と聞けば勘のいい方はお気づきのように、“切り裂きジャック”をモチーフにした作品
つまり、ファンなら妄想したことがあるであろうシャーロック ・ホームズvs切り裂きジャックという夢のタイトルマッチが見られるぞ!
それだけでもオススメに値する

実は原作というか元になった書籍があり、それが1976年にジャーナリストのスティーブン・ナイトが記した『切り裂きジャック最終結論』
つまるところ切り裂きジャックの正体に言及した一説である
数年前にはDNAから正体がわかったと話題になった(ミスがあったとかで今では疑問視されてる)切り裂きジャックは、事件当時から様々な説が飛び交うことで、猟奇的な連続殺人犯でありながら人気を博しているけど、本作はそんな1つの説と同時代を舞台にしたホームズを組み合わせた作品なのだ
ちなみにホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルは、生前に家族に向け切り裂きジャックの正体を「女装した男性である」と推理している
当たり前のようにその説が採用されてるわけではないけど、当時からも注目されてたことがわかると思う
ドイルの説が気になる人は『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』でも観てくれ

ここで上記の説を解説してしまうとネタバレになってしまうので止めておくけど、ストーリーはなかなか驚きの方向へと進むのは確か
陰謀論的な説は同じ切り裂きジャックをモチーフにしたグラフィックノベルとその映画化『フロム・ヘル』でも描かれたけど、本作もその調子で突拍子も無いと言えば無いけど、途中霊能者が出てきたりする時点で認められないシャーロキアン諸兄は察してほしい
それでもプロット自体は手堅く楽しめると思う
ただ展開は若干悠長で、作品自体も長めではあるけど、変に二転三転するというより叙述的に魅せていく感じがホームズっぽい

あまたの俳優がホームズを演じる中、本作で演じるのは名優クリストファー・プラマー
今では激渋オジサンだけど、もうスマートなイケメンで、個人的にはイメージ通り
キャラクター像としてホームズ自体が原作に比べて人情味あるような気がするけど、事件解決への情熱や意味深な振る舞い、重し入りのマフラー振り回して戦ってる姿も全部様になってて良い
ワトソン君もジェームズ・メイソンが、ホームズとはまた違った理知的な紳士を演じきってる
その他ドナルド・サザーランドが出てたり、名優の共演も注目してほしいところ

探偵映画としては上手く作られた隠れた名作なので、シャーロキアンもそうでない人も楽しんで観ましょう
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