猫脳髄

虐殺の週末の猫脳髄のレビュー・感想・評価

虐殺の週末(1979年製作の映画)
2.8
監督・脚本の"クロード・プシュキン"とは何者なのか。私が観賞したヴァージョンでは監督・脚本がノンクレジットなのが不可解だが、各種ソースをたどると、監督・脚本ともにデヴィッド・ポールセン(「スキゾイド」(1980))が担当したらしい。80年代全盛期の標準からすると、やや濃いめの濡れ場を盛り込んだ、スラッシャー黎明期のエクスプロイテーション映画といっていいだろう。

イタリアのジャッロ・ジャンルがそうであったように、正調ミステリからHowdunit、就中、残酷描写を強調することで逸脱し始めたのがスラッシャーの始まりとすれば、本作は正調たるWhodunit、Whydunitの描写に不器用ながら気を払っており、ジャンル黎明期にバランスを模索する状況が伺える。

子どもを前夫に預けて現在の恋人や仲間とともに週末旅行に出かけた主人公たちが、ラバーマスク姿の殺人鬼に襲撃されるというシンプルな筋書きなので、畢竟、注目は殺人表現とエロ描写に集中する。殺人鬼の造形は「悪魔のいけにえ」(1974)のレザーフェイスに多くを負っており、ご丁寧にチェーンソーを得物にする(厳密にいえば正体が露見してからだが)。必ずしも血みどろというわけではないが、電動ノコに犠牲者を括りつけ、第三者がスイッチを入れると…という手の込んだ演出も見受けられる。このほか、割と見逃せないのが濡れ場の表現で、ごくまっとうな牛の乳しぼりを何ともエロティックに描写しているところは感心する。

上述したように、正調Whodunitを意識しており、冒頭とクライマックスを繋げて、生硬ではあるがミスディレクションを試みている。ヒロインが誘惑を試みる製材業のシブめのおっさんをデヴィッド・ゲイルが演じている(のちに「ZOMBIO/死霊のしたたり」(1985)の敵役ヒル博士を怪演)。
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