TAK44マグナム

プラネット・オブ・ファイヤーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.4
ワルなマイケル・パレが大暴れ!


マイケル・パレと名優リチャード・ファーンズワースが共演したSF西部劇。
この2人がまさしく決闘する場面がクライマックスです。


冷酷無比な悪党グレンジ(マイケル・パレ)は遂に捕まり、地球から遠く離れた植民星へ流刑される。
収容所での初日に早速問題を起こすグレンジを制止したのは脱走者を捕縛する賞金稼ぎのウォーカーであった。
しかしグレンジは諦めていなかった。
密かに爆破装置を作っている囚人を味方につけ、さらには暴力で囚人たちのボスの座についたグレンジは、虎視淡々と脱走のチャンスをうかがっていた。

囚人たちの規律が甘いから脱走が絶えないのだと所長に直談判するウォーカーであったが、所長は聞く耳をもたない。
危機感をおぼえるウォーカーは、家族や師匠である大佐(リチャード・ファーンズワース)に「地球へ戻るつもりだ」と相談する。

だがいよいよグレンジの脱走計画が決行され、資源採掘坑道の爆発に紛れて銃とクルマを奪った囚人たちが一斉蜂起する。
彼らは所長を人質にして、地球への連絡シャトルをのっとろうと画策していた。
社長宅を訪れていたウォーカーの妻は巻き込まれ、グレンジによって殺されてしまう。
復讐を誓うウォーカーはグレンジ一味を追うが、壮絶なカーチェイスの末にグレンジの放った銃弾に倒れてしまうのであった。

弟子の死を知った大佐は武装し、グレンジ一味が占拠したシャトル発着場近くの街へと赴く。
次々と囚人たちを倒してゆく大佐。
そして、最後に残ったグレンジとの一騎打ちが始まった・・・!


「ストリート・オブ・ファイヤー」でブレイクし一躍人気スターの仲間入りをはたしたマイケル・パレには「プラトーン」の主役オファーが舞い込むほどであったらしいですが、演技の幅をひろげるにはヒーロー役ばかりでは駄目だと、悪役である本作をチョイスしたとのこと。
本作にはヒーロー役となる賞金稼ぎも登場するのでそちらの役でのオファーだったのかもしれませんが、結果的に印象に強く残るであろう残忍な悪党キャラクターを熱演しております。
一緒に画面に映るのは終盤のごく僅かだけですけれど、後にオスカーもゲットするリチャード・ファーンズワースと共演できるのも魅力的だったみたいですね。

内容としては、簡単にいえば「マッドマックス」の宇宙版。
とはいうものの、映るのは専ら砂漠とかばかりなので宇宙である必要はまるで無し。
カーチェイスも「メガフォース」に出てきたメガクルーザーをオープン仕様にしたみたいな安いバギーカーで追いかけっこ。
「マッドマックス」を10倍薄めた感じで、5年もののパンツのゴム並に緩い!
それはもうユルユルです!
爆弾製作に必要なものが真空管だったり(真空管を飲み込んだ男がウンコして出したのをマイケル・パレが摘んだところで汚っ!って思ってしまいましたよ!)未来的なガジェットはとことん出てきません。
襲撃されるバスだけは、やたらと変にオモチャちっくなデザインをしていましたが・・・

途中までヒーロー役はウォーカーなのですが、最後は年老いて引退していた大佐が出張ってくるのが一捻りありますね。
当然、激しいアクションがあるわけではないのですが(だからこそ若いヒーロー役も必要だったのでしょう。派手なアクションは中盤までに集中しています)、なかなかどうして渋みのあるリチャード・ファーンズワースの佇まいが格好いい。
ひとり、またひとりと囚人を冷徹に狩ってゆく姿は復讐モノの王道です。

ルトガー・ハウアーの「ウェドロック」みたいに爆弾首輪とかで囚人を管理すればよいのに、わりと脱走し放題だったりするユルユルな管理体制には疑問しかありませんし、脱獄モノのキモである緊張感が全く生まれないので全体的にも締まりが弱いのは如何ともし難いところ。
無駄に爆発したりはするのですが、どこか牧歌的で、とにかくディティールに関してチャチなのが残念ですね。
そんな中でも一生懸命に存在感を発揮しているマイケル・パレは紛れもなくスター性があったかと思います。
本作がもう少しバジェットの大きい作品であったなら、もしかしたら多彩な役柄をこなしつつ、A級スターであったかもしれません。
そう思うと、つくづく惜しい作品。
非常に安っぽくても、つまらなくて途中で観るのを止めようかと思うほどではないだけに本当に惜しいなと思いました。
予算をかけて、ちゃんとしたガワで覆えば(「マッドマックス」のエピゴーネンとして、だとしても)後世にタイトルを残す一作になりえたのではないか・・・そんな気も(ホンのちょっとだけ)します。
誰彼にでもオススメできる代物ではございませんが、マイケル・パレがお好きなら見逃せない一作。
それ以外の方は観なくても何の問題もありません(汗)


セルDVDにて