佐藤克巳

高原の月の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

高原の月(1942年製作の映画)
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優しく慎み深い日本社会だった頃の記憶が蘇る様な心温まる佐々木啓祐監督の、日本アルプスの高原を舞台にした祖父坂本武と孫の長女高峰三枝子、長男大塚正義の家族愛ドラマであり、佐々木康監督の応援を得て音楽映画としても秀逸な一作。山小屋に独り住まいの一克さんと渾名される坂本が、南方帰りの大塚と同居を始め、その可愛がり様は並大抵ではなく、柔和な人柄に変貌して周囲は驚く。高峰が遠方の小学校に赴任し、大塚は地元分教場の一年生に入学する。先生佐野周二や親友にも恵まれすくすくと育ていく大塚を、迎えに出た坂本が足を滑らせ入院したある日、父戦死の報が看病中の高峰に届き佐野と相談の上伏せた。回復し帰宅した坂本の元に父の日記が届きその事実を知らせると、二人は大塚には時が来る迄黙って居ようと誓った。坂本は大塚を抱き寄せ、高原の月に向かって歌い悲しみを堪えた。
佐藤克巳

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