DaiOnojima

ソルジャーブルーのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

ソルジャーブルー(1970年製作の映画)
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 1864年11月、米軍(アメリカ白人の騎兵隊)がネイティブアメリカンを無差別虐殺した「サンドクリークの虐殺」を描いたニューシネマ期の作品。

 すごい映画。でもいわゆるウエルメイドな傑作とは言い難い。お話もだいぶ無理があるし、ラスト15分の大虐殺シーンに至るまでのゆるふわな青春ロード・ムーヴィーみたいなパートも、最後の最後のエンディングも甘い。しかしこれは先住民から土地を奪った「侵略者としてのアメリカ白人」をアメリカ人自身がほぼ初めて描いたという意味で、まさに作られたこと自体に意義がある歴史的な作品であって、これ以降、白人=絶対正義、インディアン=絶対悪という昔ながらのステレオタイプな西部劇は作れなくなってしまった。高校生の時に名画座で見て異様な衝撃を受けたことを鮮明におもいだす。

 この作品はベトナム戦争で米軍が500人以上もの無抵抗のベトナム人を殺害した「ソンミ村虐殺事件」(1968年)をモチーフにしていると言われる。そういう意味でベトナム反戦運動真っ盛りの時期だったからこそ作られた作品と言える。50年以上がたった今、改めて見返すと、白旗を上げたネイティブ・アメリカンたちを片っ端から殺し、数百人もの無抵抗の非戦闘員(大半が女性と子供)を強姦・虐殺して気勢をあげるアメリカ白人たちの最低最悪の侵略者ぶりを、アメリカという国の醜悪でどす黒い本質を浮き彫りにした作品として、およそアメリカやアメリカの文化に少しでも関心があるなら、絶対避けて通れない作品だと感じる。本作の惹句にあるように「ラストの15分、決して目をそむけてはならない」のだ。 

 そしてこういう自国の加害者性をきっちり見つめた作品を作ったアメリカの懐の深さも感じる。日本映画がたとえば太平洋戦争を描くと、ほぼ例外なく戦争被害者としての日本人をお涙頂戴で描くばかりで、たとえば日本軍が朝鮮や中国やアジア各地で何をやってきたか真正面から描いた作品なんて、ほとんどない。いつかそんな映画が作られる日が来るだろうか。
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