猫脳髄

悪魔の性キャサリンの猫脳髄のレビュー・感想・評価

悪魔の性キャサリン(1976年製作の映画)
3.1
ハマー・フィルム晩年、おそらくホラーとしては最終作にあたる、数少ないオカルト系の作品である。ハマーの斜陽期とオカルト・ブームが重なったため、本作含め2作品(テレンス・フィッシャー「悪魔の花嫁」(1968、未見)。本作同様、デニス・ウィートリー(ホイ―トリー)の原作に材を取る)しか製作されなかったが、70年代のハマー作品では最も興行成績がよかったらしい。

オカルト作家のリチャード・ウィドマークは、バイエルンの修道院からロンドンに戻ってきたナスターシャ・キンスキー(当時何と14歳!)の父親(デンホルム・エリオット)から娘の保護を依頼される。どうやら彼女が過ごした修道院はクリストファー・リー率いる悪魔崇拝者の巣窟だったらしく、キンスキーはある重要な役割を果たすためにロンドンに帰還したようだが…という筋書き。

重鎮ウィドマークと、ハマーの申し子リーを善玉悪玉に据え、美少女キンスキーをめぐってオカルト対決という構図だが、あまりに説明不足なシナリオのわかりにくさと人物描写の粗雑さで相当点を落とした。

前者についてはシナリオの軸を明らかにしないまま断片的な描写が連続することに起因するが、オカルト作品の場合、もっと不穏さ、不気味さを加味してサスペンスを盛り上げていればまあ成立はしたはずだ。一方、後者は演出の明らかな失敗で、ウィドマークとキンスキーを除き、リーですら紋切り型以下で、人物像が漠然としているため状況を汲み取るのも難儀。それが不気味さに転調するでもなく、ひたすら不全感が続く。

結果、ウィドマークとリーが対決するクライマックスもどうしてそこに至ったのか描写が足りないため、コチャコチャとしたやり取りも意味不明である。おそらくキンスキーには含みが残る終わり方だったはずだが、そこもいまひとつ確信が持てない。脚本も演出も冴えないうえに、当時14歳だったキンスキーをフルヌードにしたのもだいぶ問題がある(※)。いぶし銀のウィドマークの演技だけはかろうじて楽しめた。

※作品上の設定が18歳なのだが、およそその年齢を下るとは思えない成熟ぶりには驚かされる。正直、観賞中は成人年齢だと思っていた
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