浅野公喜

スパイナル・タップの浅野公喜のレビュー・感想・評価

スパイナル・タップ(1984年製作の映画)
3.8
架空のイギリスのヘヴィメタルバンドの全米ツアーを追った「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー監督(&一部出演)による疑似ドキュメンタリー(モキュメンタリー)。今年3月には40年振りの続編の撮影がスタートしたとか。

スコーピオンズの如くレコードのジャケット発禁&差し替え、ドラマーがやたら死ぬ、メンバーの彼女(ボニー・タイラー似)があれこれ口出してきて迷走、マネージャーと不仲、主要メンバー脱退で落ちぶれるも日本で人気が出てしまう等ロックバンドあるあるが洋楽あるあるでもお馴染みレイザーラモンRGもおそらく満足する程これでもかと盛り込まれており、メンバー一人一人が殻のセットから出るも一人だけ出られない、ストーンヘンジのセットを用いるも発注ミスで極小サイズのものが上から降りて来るくだりが個人的にツボでした。

惜しむらくはヘアメタル(LAメタル)全盛を迎える84年製作でLAの実力派バンドのラフ・カットそしてヘアメタル流行の火付け役クワイエット・ライオットにも居たポール・ショーティノも出演しているのにその流行が大して描かれていない事。時代設定が82年なのでたった数年で流行が変わってしまい、70年代を引き摺ってるような少し古臭い彼らの曲やヘアスタイル衣装が笑い者にされたり同時期に騒動となったティッパー・ゴアが設立したPMRCによる過激な歌詞への弾圧等も描いてくれたら更に良かったと思います。

長きにわたって活動するバンドという設定なので、60年代中盤にはスーツ着た初期ビートルズ系、後半にはサイケデリック系になったりとその再現度の高さ&節操のなさも笑える箇所でしょうか。節操のなさとは少し違いますが様々なジャンルの傑作を作っているライナー監督はもっと評価されていいはず。
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