日本の武士道に触れるのにも似た余韻
ロベルト・ロッセリーニ
『ヴァニナ・ヴァニニ』
円熟期ロッセリーニの歴史メロドラマの集大成。
ウィーン体制下のイタリア、貴族社会の進歩的なご令嬢とイタリア史で有名な反体制地下組カルボナーリ党の悲恋物語。
図式はオーソドックスですが型通りの余韻など微塵もありません。
貴族文化に根ざした生活様式の保守性と時代の改革を目指す理想性を、ロッセリーニ独自の倫理で描き切った第一級品。
因習と打算の中で、尚も若い男女の情念がどうしようもない生きものとして立ち現れるさまは、定石どおり悲劇的結末なのに、生動する条件と戦いながら可能性を広げていく日本の武士道に触れるのにも似た余韻がありました。