半兵衛

スパイダー・ベイビーの半兵衛のレビュー・感想・評価

スパイダー・ベイビー(1968年製作の映画)
3.5
殺人嗜好と食人趣味を持つ異常な一家が遺産相続のため訪れた人たちを襲うというストーリーは後年の『悪魔のいけにえ』のようで興味深い、ただし殺人場面やグロな演出は一切存在せず役者の怪演だけで強引に押しきっている。それでも冒頭の郵便配達人を殺人少女が「クモの巣」で束縛して耳を切断するシーンや一家が食する『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪が食べそうな料理の数々は結構エグい。

異常な血を受け継ぐ面子はみな成人なのだが、少女や幼児のような振る舞いをするので不気味さを強調し退化現象を納得させる。そして後半、無邪気に大人を襲い弄ぶ少女の気味悪さ(あのニタニタ笑顔が…)が顔立ちがきれいなだけに余計えげつなく感じる。そんな一家になんとか殺しをさせず平凡な生活をさせようとする唯一の常識人である執事をロン・チェイニー・Jr.の好演もあってその苦労と悲哀がしみじみ伝わってきた、でもトータルで見れば一番ヤバい奴だったかも。

唯一の親族である姉弟(物語は弟が回想する形で進められる)や弁護士に付いてきた秘書などのリアクションが良いのも後半の狂気を増幅させていた、そしてセクシーな下着で男性客を魅了したお姉さんは単なる被害者要員かと思いきや後半まさかの活躍を披露する。

ストーリーは普通の人とそうでない一族のやりとりを延々とやるだけなので中盤まで大したことも起きないので気が緩んでしまうが、後半の異様な演出をこれでもかとだめ押ししてくる展開で一気に観客を引っ張っていく手腕に唸らされる。屋敷の構造の真の意味が理解できると同時にそれまで姿を現さない当主が出てくる流れも見事。

ラストのオチは小松左京の『くだんの母』を思わせた。
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