イチロヲ

スパイダー・ベイビーのイチロヲのレビュー・感想・評価

スパイダー・ベイビー(1968年製作の映画)
4.0
豪邸で疾患もちの孤児3兄妹を養っている老人が、相続の要求をするべく訪れた親戚を恐怖に陥れてしまう。"純真と狂気"の表裏性を題材に取っている、ホラー・コメディ。後にブラックスプロイテーションで名声を上げる、ジャック・ヒル監督のデビュー作品。

心身ともに退化していく遺伝的疾患「メリー・シンドローム」という概念を用いながら、邸宅で暮らす兄妹の奇妙な日常をスケッチしていく。"食人家族"という先鋭的なモチーフが採用されているため、後発作品への影響力を汲み取ることができる。

登場する兄妹は、言葉を喋れない幼児同然の長男、クモに執着している長女、打算的な言動を引き起こす次女、という顔ぶれ。喜劇路線に振り切っている作風だが、思春期の少女特有の"形容できない怖さ"というものが、ビンビンに伝わってくる。

本能では異性に興味津々だけども、精神的に退化しているため、狂気性が表出してしまう。そんな特殊極まりない状況を、鮮やかにコメディへと落とし込んでいる。両手に包丁をもち、クモの舞いで接近してくる少女がキャッチーで面白い。
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