emily

愛人のいる生活のemilyのレビュー・感想・評価

愛人のいる生活(2010年製作の映画)
3.6
画家の父の仕事、二人の息子ニコラとブラツォ、ニコラの妻アナマリア、ブラツォの妻マルタ、そうしてニコラの愛人で子供までいる女性と五人が繰り広げる愛とセックスに溺れた一つの幸せの形をシリアスなテーマに絡めて描く群集劇。

赤い壁から、青い壁の廊下へ、上から捉える雨、黒い傘、黒い服、言葉少なく色の変化で見せていく。そこから黒に浮かび上がる絵画が移動させられ、白い壁からスタイリッシュな部屋へ。ここまでほとんどの会話がないのにしっかり動きを感じるのは色の変化であろう。そこから一気に生活感の溢れる不妊治療の話に入っていくのだ。意味深に見せた冒頭とは違う、捉えるテーマは、現実的で狭い世界で繰り広げられる男女の普遍的な性にまみれた滑稽な姿である。五人の男女がここまで見事に交わり、それでいて交換することもできず、皮肉感たっぷりのユーモアの中で描かれるが、その情けなさが愛おしく人間味を感じるのだ。

それぞれの悲しさや切なさを受け入れてくれるのが例え自分のパートナーでなくとも、それでうまく行くのならよい。ラストの一本道を歩く家族の姿が、滑稽であれど、彼らなりにそこそこ幸せに日々を過ごしてる。思い通りには行かないが、その中で自分たちのわずかな幸せをしっかり抱きしめて、情けないけど笑顔で、憎たらしいけど抱きしめて、未来へ歩いて行く。上を見ればキリがない。下を見る必要はないけれど、今の生活も悪くないのだ。
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