そーいちろー

ことの次第のそーいちろーのレビュー・感想・評価

ことの次第(1981年製作の映画)
3.8
いわゆる映画作りをテーマとした映画内映画、メタフィクション、劇中劇といったものであるのだが、不思議な映画であった。筋としては、ポルトガル・リスボンで「生存者」というか近未来の疫病が流行った世界を舞台としたサバイバルSF映画をアメリカ資本で撮るドイツ人映画監督が、プロデューサーのゴードンとの連絡が途絶え、資金や提供されるはずのフィルム等の映画物資も提供されない中で映画製作の継続が困難な状況に陥る。その手詰まりな状況で、徐々に変調を来たす映画スタッフと出演者たち。なんとかその危機を打開すべくゴードンに会おうとアメリカ・ハリウッドに赴く映画監督。アメリカでゴードンと出会うには出会うのだが…といったストーリー。元ネタはどうやらヴェンダース自身の実体験らしく、そこにはヴェンダース作品特有のロードムービーの魅力、緩やかな時間軸、またその旅でぶつかり合う異文化との遭遇(今回で言えば欧州とアメリカ)、また滲み出るヴェンダースの映画愛と、ハリウッド映画への愛憎(本作の下敷きにはジョン・フォード「捜索者」がある)。そういうのが渾然一体となって迫り、不思議な酩酊感に満ちた状況で、ラストシーンの銃殺シーンに至るので、本当に不可思議な気持ちに陥った。やっぱヴェンダースってロードムービーの監督なんだな。
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