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ルシアとSEXのemilyのレビュー・感想・評価

ルシアとSEX(2001年製作の映画)
4.1
ロレンソの別れを告げる手紙と、警察からの電話。ルシアは現実を避けるように島へ向かう。ロレンソは作家で、ルシアに声をかけられ二人は恋に落ちて、一緒に暮らしはじめる。ロレンソには彼女に話していない昔大恋愛したエレナという女性との間に子供がいて、エレナのベビーシッターと共に子供ルナに近づき、物語を作り上げていく。ベビーシッターと一夜を共にし、悲劇がおきる。


サスペンスフルに切り替わる電話、手紙と一気に広がる壮大な海。バイクで走るルシアの目の前に明るく煌びやかな海が広がる。
走る彼女、走るロレンソ、その臨場感はカメラの揺れではなく顔が揺れてぼやけることで感じさせる。一気にセックスだらけの幸せな日々の映像になる。

ロレンソは作家であり、物語の中で、現実から妄想を膨らませたストーリーを書いている。それを映像化し、現実と交差してくるので、物語は複雑化していく。
さらには現実が物語を超える展開をみせ、時系列もいったりきたりし、同時にエレナのエピソードも重なり合うので、現実と物語の境界線がぼやけてくる。

性全開ではあるが、トーンは開放的でありながら、サスペンスフルで、海の透ける透明感の色彩バランスが時間により顔を変え、みずみずしい愛の物語を縁取っている。

徐々にエレナやカルロスの関係は明かされていく。しかし本作は「穴に落ちれば、物語の途中に戻れ、そこから自分の好きな方向に変えれて、また始められる。」というテーマの上成り立っている。物語の糸が繋がったところで、また戻り、やり直していくのだ。複雑化されたパラレルワールドを堪能しながら、物語の迷子になるのが心地よい。迷えば巻き戻してまた始めればよい。また別の解釈が生まれ、何倍も物語を楽しめるのだ。

ロレンソの小説の編集者演じるハビエル・カマラは少ない出番ながらも、やはり独特の同性愛臭がただよってるのがいい。彼のファンの私としてはそんな彼をみるだけで、充分に満足できる作品である。
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