不在

蛇の卵の不在のレビュー・感想・評価

蛇の卵(1977年製作の映画)
3.8
タイトルの蛇の卵とは、蛇の姿は卵の時点で透けて見えている事から転じて、将来起きる出来事の予兆は、今既に予見されるという意味だ。
作中ではヒトラーによるミュンヘン一揆は失敗に終わり、ドイツの民主主義が生きている限りナチスの台頭はあり得ないと語られるが、その失敗からたったの10年でヒトラーはドイツの首相になる。
後はご存知の通りだろう。
タイトルの言葉が本当なら、何故卵が孵る前に手を打たなかったのか。
それは卵の中身が全て透けている訳ではないからだ。
生まれてくるのが毒蛇かどうかも分からない。
ブルータスが王になる前のシーザーを殺したように卵が孵る前に始末すればよかった、なんて戯言は、全てが起こった後だから言えることだ。
歴史とは所詮は結果論。
全て分かっているつもりの人間が、一番愚かなのだ。
ベルイマンは皮肉としてこのタイトルを付けたのだろう。
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