ベルイマン監督作品は気が向いた時に少しづつ紐解きたいと思っていて、これは7本目。

敷居が高いイメージのあるベルイマンだけど、この作品は驚くほどに観易いです。いつもの心情描写を考えずに観れてしまいます。

というのは当時のベルイマンはスウェーデンで脱税容疑で逮捕されて嫌気が差し、母国と決別してミュンヘンへ移った変換期。
そんな時、2人の製作者と出会い、思い掛けない巨額の資金を提供されたお陰で米国製作。初の英語作品でもある。
ベルイマンにとっては夢のようなお金の掛け方で、セットからキャストから他作品とは全然違うものになっています。


1920年代のベルリンが舞台。ナチの台頭に先立ち街中が暗くなり、どんどん退廃していく文化の中での出来事を描いています。

サーカス団員の男アベル（デイビッド・キャラダイン）は怪我で仕事が出来ず飲んだくれの日々。兄が自殺し、警察にはユダヤ人というだけで疑いの目を向けられる。兄の元妻マヌエラ（リヴ・ウルマン）から助けてもらいながら奇妙な仕事をする事になるが、そこはなんと、病院と言う名の下で、ある医師が人体実験を行っている施設だった...


人格の崩壊というテーマを扱ってもいるポストモダン的な内容となっていて、タイトルの『蛇の卵』とは、薄皮に包まれた蛇の卵を覗くとその中に邪悪な蛇の姿を窺い知ることができる。という意味に絡めています。


リヴ・ウルマンはキャバレーの踊り子として歌って踊る姿も見れるので貴重ですね。
監督の妻にはならなかったけれど、一緒に暮らしていた時期も長く、監督を良く理解して素晴らしい演技を披露しています。


ベルイマンを追求する方には戸惑いがあり、ベルイマンらしくはないけれど、私はとても面白く観ることが出来ました。

第一次大戦敗戦後、ハイパーインフレからヒトラー台頭までのドイツ。ナチスの影が水面下でゾワゾワと広がる当時ベルリンの異様な空気感が怖い。第二次大戦〜敗戦〜壁崩壊の歴史的重要性が高過ぎて、あまりスポットが当てられることのない前夜時代。ヴィスコンティのは傑作だった。異質なベルイマン作品。

ジワジワと増幅される人間の闇、戦争の種。蛇の卵。
戦争の本質とは、、

この映画は戦争をダイレクトに描く訳でもなく、ヒトラーが登場する訳でもない。
その根元を捉えようとしている所が素晴らしい。

元サーカス団のアベルは兄の元妻に兄の自殺を告げに行く。
アベルに近しき人達の不審死、、
彼に容疑の目が向けられる。。

アメリカ資本によりドイツで製作された作品という事で、お金をかけてる感が良く出ています。

ほとんどがセット撮影。しかしその完成度の高さに驚き、、
何という美しさ、俯瞰で捉えた夜の裏路地といい、目を見張る構図の素晴らしさ。。

冒頭のスローで映し出す人混みの映像美、、

見所は多く、捻りの効いた脚本も絶品でありました。

ただ個人的にデヴィッドキャラダインが少々苦手、、
おじいちゃんになってからはカッコいいとは思うんですが(^^;

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