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ワッツタックス/スタックス・コンサートのkaomatsuのレビュー・感想・評価

4.0
1965年に米カリフォルニア州ワッツ市で起きた暴動事件、いわゆるワッツ暴動のメモリアルとして、事件の7年後に開催された、スタックス・レーベル専属アーティストたちによるライヴ・ドキュメント映画。

非常にマニアックな内容ながらも、かいつまんで紹介すると、まずはステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルのヴォーカルの素晴らしさ。そして、最も古いファンク・バンドといわれる、バーケイズのド派手なパフォーマンス。バーケイズの初期メンバーのうち5人は、1967年、オーティス・レディングとともに飛行機事故で亡くなっている。その悲劇から5年後の本作では、後継メンバーが加入して、見事に復活している様子がうかがえる。ライヴ外でのインタビューで印象的だったのは、ブラック・ピープルの中でも、古臭いとか、暗いとか、悲しいとか、諸々の理由で、ブルーズが嫌いな人も多かったこと。そんな中、唯一の生粋のブルーズ・マンとして、愛用のギブソン・フライングVをキュインキュインとむせび泣かせて歌うアルバート・キングは、やはり最高だ。そしてそして、パステルピンク色のマントとスーツで登場したルーファス・トーマスの存在感! 代表曲「Do the Funky Chicken」のちょいユルなグルーヴ感は、まさに彼ならでは。フェンスを越えてフィールドに入ってくる観客たちを、ユーモアを交えて、ゴスペル風の口調で注意していたのが印象的だった。ルーサー・イングラムのソウルフルな渋ヴォイスもたまらない。そしてコンサートのトリは、当時スタックスの看板アーティストで、映画『黒いジャガー』のサントラを大ヒットさせて間もない頃のアイザック・ヘイズ。この方も一見ハデハデだが、元々はサム&デイヴらに楽曲を提供していた裏方職人。めちゃ低いトーンの歌声が印象的だ。

本作の語り部は、1980年代のハリウッドのコメディ映画でちょくちょくお見かけしたリチャード・プライヤー。ブラック・ピープルへの偏見が渦巻くアメリカを、自虐ネタと強烈な毒舌でまくしたてる、そのライヴ感あふれるトークは圧倒的。一番インパクトがあったのは、実はこっちだったかも…。いやはや何にせよ、私のようなブラック・ミュージック好きにはたまらない映像作品だった。今回は思いがけず、私よりはるかに映画&音楽通と思われる会社の同僚の方に、この貴重な映画のDVDを頂戴した。このレビューを通して、深く感謝&御礼申し上げます。
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