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バード★シットの一人旅のレビュー・感想・評価

バード★シット(1970年製作の映画)
4.0
ロバート・アルトマン監督作。

空を飛びたいと夢見る青年と連続絞殺事件の顛末を描いたコメディ。

『M★A★S★H マッシュ』(1970)『ナッシュビル』(1975)『ビッグ・アメリカン』(1976)の鬼才ロバート・アルトマン監督による風刺コメディの怪作。

本作は恐らくアルトマン史上最も奇想天外&シュールな逸品です。ヒューストンの野球ドームの地下で暮らす青年ブルースター・マクラウドを主人公に、鳥のように空を飛ぶため飛翔装置を開発中のブルースターの奮闘と、彼の周辺で発生中の連続絞殺事件の捜査を展開する超人警官の姿を、それ以外に個性豊かな登場人物やさまざまな小エピソードを織り交ぜながら描き出しています。

一応ストーリーらしきものはありますが、実際はあってないようなものです。お話に論理性はありませんし、アルトマンらしく自由を極めた展開・演出で始まりから終わりまで突っ走ってくれています。

冒頭から笑わせてくれます。MGMのシンボルマーク=ライオンが映る映画ファンお馴染みの冒頭では、ライオンが吠える前に急に画面が切り替わり映画がスタートします。ライオンに吠えさせる余裕すら与えません。
その後も自由で奇想天外な演出が炸裂。ひっきりなしに空から降ってくる鳥のフン。なぜか絞殺事件の被害者全員にフンが付着しているという謎。事件の捜査に当たる超人警官もちょっと胡散臭い奴で、無理やりコンビを組まされたパパさん警官との掛け合いがコミカルです。
かと思ったら、今度は脈絡なくカーチェイスがスタートする。線路上をガッタンガッタン揺らしながら逃げる車、追う警察車両。緊張感はほとんどありませんが、ドリフト走行を交えながら形だけは本格的なカーチェイスを演出しています。
ブルースターを取り巻く美女の存在も欠かせません。背中に翼の傷跡が残る美女はブルースターのスポンサーで、彼の飛翔装置開発を支援しています。彼女とは別にもう一人ドームガイドの若い女がいて、彼女はブルースターにぞっこんの様子。ブスではないですが、下まつげの存在感が強烈な風貌でブルースターを誘惑します。
クライマックスの飛翔からの大団円まで、アルトマン流の摩訶不思議世界が貫かれています。野球ドームでそれまでの登場人物が紹介ナレーション付きで一斉に再登場しながら大騒ぎする場面はなぜか『フェリーニの道化師』(1970)を想起させます。

論理的な感想を述べるのが難しい、ロバート・アルトマン監督幻のカルト・コメディ。「考えるな、感じろ」の柔軟な姿勢で鑑賞してみて下さい。
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