櫻イミト

バード★シットの櫻イミトのレビュー・感想・評価

バード★シット(1970年製作の映画)
3.5
ロバート・アルトマン監督の出世作「M★A★S★H マッシュ」(カンヌ・パルムドール受賞)に続く同年の作品で、シュールでブラックコメディ調の青春映画。

アルトマン監督の作風は苦手な方なのだが今作は意外に楽しめた。アメリカン・ニュー・シネマの香りがすることと、主演のバッド・コート(「ハロルドとモード」「いちご白書」など)が醸し出すモラトリアム青年像も魅力がある。前半はこの監督にありがちなふざけたエピソードが続き少々退屈。しかし後半から今作がデビューの”シャイニング絶叫妻”ことシェリー・デュヴァルが絡んできて話が転がり始める(デュバルのギャルメイクはなかなか強烈だが、今作にスカウトされた時も同じメイクだったとのこと)。
そしてラストシーンが素晴らしかった。屋根付きのドームは、冒頭のアメリカ国歌斉唱で布石が打たれていた通り”閉塞した自由の国アメリカ”を暗喩している。飛び立つブルースターの姿は非常に感動的だが、しょせんは籠の中の自由である。そして、傷つき倒れた兵士でさえショーアップし、ビジネスで飲み込んでいくアメリカ・・・。
このラストシーンについて監督はフェリーニの「8 1/2」を意識したと語っている。

※復刻シネマライブラリーによるあらすじ
主人公であり、原題にもなっているブルースター・マクラウドは屋内野球場(アストロドーム)のポンプ室に住み、鳥のように自分の力で空を飛ぶために自力飛行装置の研究と、肉体を鍛えるためのトレーニングに余念がない。主人公につきまとう少女ホープは勤め先の店の食料品をかすめ盗っては彼の為に運んで来るが、性的妄想に囚われている。もう一人のミステリアスな女ルイスは、存在するのかしないのか、その実態が分からないが、ブルースターの行く先々で彼を救い、彼を導く。ブルースターを運転手に雇っているのは120歳を越え、今では守銭奴の鬼と化したライト兄弟の兄エイブラハム。彼が何者かに殺され、その顔には鳥の糞がかかっていた。この事件を追うためニューヨークから名うての刑事シャフトがやってくるが、空回りの捜査の挙句拳銃自殺する。アストロドームの案内嬢スザンヌの車を盗もうとしたことがきっかけでブルースターは彼女に好意を持つ。しかしそれまでホープにも見せなかった性的な興味が湧いた時、ルイスは大鴉を連れて彼の元を去る。やがて、飛行装置が完成し、ついに彼は飛び立とうとするが・・・。ラストの登場人物全員によるパレードの最後に貴方は何を感じるだろうか。

※ずっと気になっていた作品だったがレンタル・配信がなく、日本盤DVDは高額プレミアがついているため観る機会がなかった。先日輸入盤LDを100円で落札できたのでシナリオと照らし合わせながら鑑賞。
櫻イミト

櫻イミト