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ゲット・クレイジーのIMAOのレビュー・感想・評価

ゲット・クレイジー(1983年製作の映画)
4.0
1983年の映画で初見。この年僕は何をしていたのだろう?時代はバブルといわれる頃で、その数年前に地元吉祥寺ではパルコがオープンし、来場者が多すぎてエスカレーターが停まったりした。CMはやたらとケバケバしく物欲を煽っていて、車会社は半年ごとに新車を販売していたし、家の値段はやたらと高騰していた。あの頃の女の子たちは皆ソバージュにして肩幅の広いデザイナーズブランドの服を着ていたものだ。エアロビクスやティアドロップの眼鏡、ケミカルジーンズにバンダナ。スター・ウォーズにブレイクダンス…あの時代からもう40年も経ってしまったのだ。そんな時代に僕は「ベストヒットUSA」と「カーグラフィックTV」を毎週土曜の深夜に見るのを楽しみにしているごくありきたりな少年だった。時代は上向きで、何事もきっと上手く行く、という風潮に満ち溢れていた。その空気感は間違いなくアメリカから来たもので、その当時のアメリカは楽観主義そのものだった。その雰囲気をそのままを表現したこの映画のおかげで、僕はタイムスリップした様な気分になった。でも僕は相変わらず吉祥寺パルコに通い続けているし、ティアドロップの眼鏡もソバージュも復活しつつある。この映画は公開された当時はあまり話題にならなかったそうだが、僕より若い世代の人たちがこの映画を発掘し、映画館で観ることが出来たのは幸福な事だと思う。

ところでこの映画は、2022年に菊川にオープンしたStrangerというミニシアターが独自に買い付けをした作品。ここでは特集を組むたびにオリジナルのパンフ「Stranger Magazine」を発行していて、毎回なかなか濃い内容のモノとなっている。今回この『ゲット・クレイジー』をセレクションした担当者Sさんの書いた序文が、この映画への愛を美しく語っています。映画は何も「名作」と呼ばれるものが全てではない。ふとした事で知り合った映画に救われることもあり、それが人生の支えになる事さえある、そんな想いについて慎ましく書かれた文章にまた救われたりもしました。残念ながら上映はもう終わってしまったけど、このStranger Magazineはまだ販売しているので、もし機会あれば読んでみては如何でしょうか?
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