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浜辺の女のdのレビュー・感想・評価

浜辺の女(2006年製作の映画)
4.7
監督デビュー(1996)から10年の2006年の作品。キャリア前半ではあるが、いわゆるキム・ミニ以後の作品と似たところがある。女にフィーチャーしてカメラで追っているところだ。映画内での描写のバランスが女に寄っているほうが、ホン・サンスには合っているのだろう。
キム・ミニ以後の展開をフェミニズム的に転回したとみる向きもあるが、「カンウォンドのチカラ」から明らかなように、ホン・サンスには最初から倫理がある。しかし、その倫理というのは机上の理想のようなものではなくて、人間的な格闘のなかで掴まれようとするなにかである。杓子定規ではないのがホン・サンスのよさだ。倫理によってエロスを否定しない。その両者を闘わせる、あるいは両者が闘っているさまを撮ることが重要になっている。
この表現方法は当然さまざまであるが、それに適していたのが「キム・ミニ以後」の方法であったのだろう。それは「浜辺の女」に萌芽がみられたわけである。

ホン・サンスの映画の女は、最初に出てきたときやそのほかのときでも、あまりかわいくないな、そんなにきれいな人ではないのね、とか思わされていても、次の瞬間には、あるいはふと、すごくかわいくなっていたり、とてもきれいであったりと、まったくちがう顔をみせる。これは本当にすごいと思う。メイクとかのレベルではないと思うのだが、どうやっているのだろう。(というかこの印象は共感されるだろうか?)
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