1984年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。メーサーロシュ・マールタ長編13作目。"日記"四部作の第一篇。『マリとユリ』や『Just Like at Home』といった作品で主要キャラを演じていたツィンコーツィ・ジュジャを自らの分身として迎え、これまでの作品に登場した役者を様々な役で呼び戻している。史実における彼女の幼少期は以下の通り。1931年にハンガリーで生まれるが、1936年に共産主義者だった両親が追放されキルギスで過ごすことになる。スターリン以前の共産主義を支持したため、彫刻家だった父親ラースローは1938年に逮捕され(1945年に死亡)、母親も出産が原因で亡くなってしまい、ソ連にいたハンガリー人共産主義者の元で養育される。一度はハンガリーに戻ったものの、1946年には全ソ連国立映画大学(VGIK)で学ぶためにソ連に渡り、1956年に卒業する。この間、卒業制作などでハンガリーとソ連を往復していたようだ。さて、本作品は1947年にユリがソ連から場面から幕を開ける。彼女を呼び戻したのは、戦前からの共産主義者で、今では党の重要ポストに就いている大叔母マグダだった。家族全員が何らかの形で共産党員だったわけだが、1919年の革命に参加した祖父は今の共産党を嫌っていて、ラーコシ体制下で権力を付け始めた妹マグダを心配している。彼らの家は"裕福"で、貴族を含めた富裕層から接収した食器や衣類などを懐に収めているらしく、祖父はそういった生活を享受している自分を嫌悪している。