いろどり

宋家の三姉妹のいろどりのレビュー・感想・評価

宋家の三姉妹(1997年製作の映画)
4.2
ありがとう岩波ホール特集上映にて。

公開当時、岩波ホールは連日満員らしいと聞いて見に行かなかったことを20数年後悔してきた映画。映画館で見たかった映画はやはり映画館で見るのが一番。積年の思いを晴らしてきた。

19世紀末の辛亥革命から日中戦争、国共内戦と激動の時代に、財閥、孫文、蒋介石の妻となり時代に翻弄されながら強く生きた大富豪宗家の三姉妹。

子供時代のアメリカへの留学経験、革命家孫文の親友である父親の影響から三姉妹は英語堪能、理知的で民主主義の思想を持っている。時代の寵児たちの妻として、時に国の行く末を動かす決断の要となる。

マギー・チャン演じる孫文の妻を中心に三姉妹の生きざまを描くと同時に、蒋介石にかなり焦点を当てているところが興味深かった。この時代を描く映画では孫文も蒋介石もアイコンとしての描写が多く、内面をしっかり描いているものは少ない。ここで描かれる蒋介石は、短気で激情家。共産主義者を受け入れ新中国を作ろうとした孫文と異なり、"反共"を掲げ共産主義者を虐殺する過激な面を色濃く描いている。その点が新しく感じ、私の好奇心を満たしてくれた。


古典や歴史劇で安定の演技をみせるミシェル・ヨーを始め、三姉妹の中で一番、自分に正直で苦悩の多い役であるマギー・チャン、不倫から正式な蒋介石の妻となる宗美齢役ヴィヴィアン・ウーと、三姉妹それぞれの美と知を女優陣がどっしりとした演技で魅せる。

忘れがちだけど音楽は喜太郎。歴史の重みを感じる重厚な雰囲気作りに一役買っていた。

私はこの時代の中国をテーマとした映画は好みで、「活きる」、「覇王別姫」、「ラストエンペラー」(伊)は不動の傑作として揺るぎないものになっている。今作はそれらに続く良作だと感じた。私がTSUTAYAの店長なら、発掘良品として迷うことなく今作を紹介したい。
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