YasujiOshiba

ザ・ビジターのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ザ・ビジター(1979年製作の映画)
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某所の大スクリーン、その3

今宵の目玉。以下備忘のために。

- ぼくはイタリアンジャンル映画の集大成のひとつだと思ったな。どこかアルジェントっぽいジャッロだし、フランコ・ネロがキリストのような装いで登場するところなんて、なんともマカロニウエスタン的だし、荒唐無稽なのだけどちゃんと歴史的なバックグラウンドがあるイタリアンSFの味わいに、ぼくはペトリの『華麗なる殺人』を思い出しちゃったし、ジョン・ヒューストンだけじゃなくてサム・ペキンパーまで登場するあたりが、いかにも嘘っぽいイタリア映画なんだけど、実にリアルな画面になってるだけじゃなくて、あの耳に残る音楽が、そのあたりをじつに盛り上げてくれるんだよね。

- その音楽をやったのはフランコ・ミカリッツィ(Franco Micalizzi)。このひとのデビューはテレンス・ヒルとパッド・スペンサーの古典的なマコロニ・ウエスタン・コメディ『風来坊/花と夕陽とライフルと… Lo chiamacano Trinità...』(1970)の音楽を書いてデビューした人みたいね。以降、けっこうな数のイタリア映画に音をつけているマエストで、この映画でも、一度聞いたらもうやみつきみたいなテーマを書いているよね。

- いちおう、ヒューストンはヤハウエイなので神で、フランコ・ネロはその子どものキリスト。サティーンとはサタンだから、その末裔のケイティはサタンの末裔ということで、女の子版のダミアンってわけか。
 この女の子版のダミアンことケイティの悪さが、なんだかスケールが小さくて、スケート場のシーンなんて、なんとも笑ってしまうんだよね。でも、弟ができて、こんな子供が増えてゆくと怖いというのあるんだよね。まさに「恐るべき子供たち」。

 このケイティを恐れもしないでビンタを喰らわせるのはシェリー・ウインター演じる家政婦だけど、このウインターがよいんだよね。ヤハウエイたるヒューストンとの会話を聞いていると、もしかすると彼女も元は天使(あるいは堕天使)だったのかなんて思ってしまう。更生した堕天使なら、ケイティにビンタを張るのも怖くはないよな。

- それから鳥ね。もちろんヒッチコックなんだろうけど、こっちの鳥はヤハウエイの使わした鳥なんだよね。地上の悪をついばんじゃうハトなんだけど、最後にその姿が画面を埋めるところは、ちょっとした「母なるシーン」(クライマックスシーン)だったよね。

ところで天国に帰ったケイティなんだけど、彼女の瞳ではなくて、キリスト/フランコ・ネロの瞳に、ちょっと悪魔的なものを感じたのは、ぼくの思い込みなのか、それとも監督の意図なのか。いずれにせよ、フランコ・ネロのキリストだからね、その純粋そうな眼差しの、ちょっと裏を読みたくもなるよね。
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