さく

山椒大夫のさくのレビュー・感想・評価

山椒大夫(1954年製作の映画)
5.0
正直、最初の方は「ちょっと古臭くてかったるい...」くらいに思いながら見てましたが、徐々に映像の美しさに自然と引き込まれていきました。最近家ではプロジェクター(安い)で映画を見るようにしてはいるのですが、これはやはり映画館で見たいですね。いつもの通りWikipediaの受け売りですが、ロングショットを多様したワンシーン・ワンカットで撮るスタイルによって生み出される絵画的な美しさ。ほんと一枚一枚の絵を見ているような感じになります。しかもどれも良い絵。

最近読んだ『仕事と人生に効く教養としての映画』という本(あまり知性を感じないような題名ではあるが)に書いてあったのですが、例の入水(名シーン)の手前側の葉っぱは黒く塗ってコントラストを出していたそうです。モノクロ(白黒)作品ながらも、カラーよりかえって色彩豊かに感じられるという素敵な演出。

ワンシーン・ワンカットによる撮影で、「役者は大変だなー」とか思いながら見ていたのですが、Wikipediaによると(こればっか)、溝口監督はかなり役者への当たりが強い人、というかある意味気狂いのレベルで厳しかったようで、そうした拘りが画面にピリッとした緊張感を生んでいるのでしょうね。映画監督に限らず、昔の巨匠なんてのはどこか頭がおかしい人が多くて、そういう意味では今の時代は、コンプライアンスがどうこうもあるのでこの手の才能は生まれにくくなってしまったのかもしれません。あと、私の苦手な「ヌーベルバーグ」に強い影響を与えた監督としても知られているようなので(ゴダールが特に強い影響を受けたとか)、ヌーベルバーグってのはこういう映画を見るときのような気持ちで見れば楽しめるのでしょうか?(ストーリーがどうこうよりもシーンを楽しむ)

名カメラマンとして有名な宮川一夫さんの貢献も高いと思います。黒澤明の『羅生門』でもカメラを務めたとのことで、そういう目線で再鑑賞もしてみたいと思いました。
さく

さく