チッコーネ

関東テキヤ一家のチッコーネのレビュー・感想・評価

関東テキヤ一家(1969年製作の映画)
3.5
菅原文太主演の東映ヤクザ系シリーズと聞いても、全く触手の動かない私なのだが、本作は別。
何と全日本女子プロレスのレスラーが出演しているのだ。

制作は1969年で、ほぼ70年代の映画。
邦画黄金期は1950~60年代前半なので、その時代の作品群を精力的に観ていると「70年代? 割と最近の作品じゃん」という錯覚が起きやすいのだが(笑)、昭和の年号では44年にあたる。
そして女子プロレス界最初の大スター、マッハ文朱のデビューまでには、あと5年待たなければならなかった。
マッハ以前の情報がわずかしか出てこない女子プロレス基準で考えると、ものすごく大昔の貴重な映像なのである。

中でも日本に初めて赤いベルトをもたらした京愛子が、軽快に動く姿に感激!
ほかにも80年代前半まで全女のレフェリーを務めていた柳みゆきや、記念イベントなどに時々顔を出していた巴ゆき子、そして美人レスラーの1人だった岡田京子が撮影に参加している(松永ブラザーズのミスター郭こと、健司氏もチラッと映り込む)。

わずかな試合場面の中ではボディスラムといった基本技からシーソー投げ、そして腕でなく足を活用したフライングメイヤーなどを確認可能で、当然受け身もしっかり取れている。
素人ではなく、日々練習を積んでいる者たちだからこそ魅せられる動きの数々だ。

さて肝心の映画の方だが、キャストの豪華さも相俟って、予想より面白かった。
任侠色の強い脚本ではあるが、ジメジメした叙情を極力排していくドライなスピード感が良い。
また暴力団から一般企業へ転身しようともがくテキヤのストラグルが盛り込まれ、共感を覚えるのはさほど難しくなかった。

また映像は、時にスタイリッシュ。
特に一人称カメラも登場する終盤の殴り込み場面はセットの色彩感覚が良く、無国籍で幻想的な雰囲気すら漂う。
雨に打たれながら、鈍く光った金網にもたれかかる文太のアップに続き、血塗られた静物で作品を締める感覚もリリカル。